①労働問題その1:残業代請求
②労働問題その2:ハラスメント
③労働問題その3:メンタルヘルス
④労働問題その4:問題社員の解雇
⑤労働問題その5:ユニオン対策
⑥労働問題その6:労働審判の実際

日本のこれまでの雇用慣行に問題があったこと、それを是正するため労働者の権利を強化するための法律改正が行われたことから、労働問題は、会社にとって難しい問題となっています。残業代請求、ハラスメントの問題、メンタルヘルスの問題はその典型です。一度、こうした問題について労使間で対立が起こると、ユニオンが介入してきたり、労働審判が提起されたりして、会社にとっては、解決がより難しい問題へと発展していきます。

①労働問題その1:残業代請求

残業代請求の時効期間が2年から3年に伸びたことが影響し、その請求額は1.5倍に膨らみました。今後は5年に延びる可能性もあります。多くの会社が残業の削減に本格的に取り組むとともに、残業代の支払いの適正化を進めましたが、そうした対応が進んでいない会社も見受けられます。しかし、残業代の支払いをしないでいると、労働基準監督署、若しくは、労働者の代理人となった弁護士から、ある日電話が入る、通知が届くという事態に立ち至ります。

訴訟を起こされると、会社はタイムカードの提出を求められ、分単位での残業代の支払いを命ぜられます。15分以下切り捨て等の時間管理の慣行は、裁判所では認めてもらえません。訴訟等で争い、労働者との関係をこじらせると、マスコミにリークされる、インターネットで拡散されるリスクもありますから、労働者からの申し入れがあったら、すぐに弁護士に依頼し、会社の計算する残業代相当金額を支払うことで労働者との和解を成立させてしまうのがベストな解決策です。

その後の対策については、残業の削減を進め、残業代の支払いを確実に行うことを労働者に対して誓約し、合意を得ることが大切です。この対策を着実に実行すれば、問題は解決するでしょう。

②労働問題その2:ハラスメント

上司の行き過ぎた指導が、今ではパワハラと認定されます。従業員の能力をこきおろす、人格を否定する発言を繰り返す、従業員のプライべートを無視して過度な残業を強要する。こうしたことのすべてがパワハラに当たります。宴会で、女性社員の体をさわる、女性社員の容姿をけなす、男性社員の性的志向を否定する。これはセクハラです。大企業では人事部が研修等を行い、パワハラやセクハラをしないように管理職の教育をしてきましたが、中小企業では、そこまで手がまわらず、未だにパワハラが常態化している会社も存在します。

こうしたハラスメントは、不法行為となり、対象とされた従業員から損害賠償請求訴訟を起こされます。慰謝料を請求されることになるのですが、その金額は高くても数百万円で収まります。これも従業員との紛争となったら、弁護士に依頼し、早い時期に和解をしてしまうのがベストな解決策です。

③労働問題その3:メンタルヘルス

セクハラ、パワハラが従業員のメンタルヘルスに影響を及ぼさなければいいのですが、従業員が適応障害等の精神疾患に罹患してしまうと、その解決に多大な時間を要することになります。

当事務所で担当してケースでは、上司も周囲の人も悪意がなかったのに、不用意な一言が従業員を傷つけてしまい、適応障害を罹患し、出社できなくなってしまったケースがありました。その方は一旦復帰したのですが、やはり以前言われた一言が気になり、周囲の目も気になって、また休職となってしまいました。その会社では休職はマックス2年間と定められ、それでも復帰できない場合には自然退職すると定められていたので、退職に追い込まれました。

メンタルヘルス問題は、パワハラの結果として発生することもあります。ある会社では、問題社員を解雇したのですが、その時上司によるハラスメント行為がありました。1時間程上司が問い詰めたという事案でしたが、従業員は適応障害になったと主張してきたのです。録音があり、確かに上司の行き過ぎた言葉もあったので、会社は「1時間怒鳴っただけで、そんなはずはない」と思ったのですが、医師の診断書が出てきた以上、それを覆すのは困難です。従業員は、まずは有給休暇を消化し、その後は休職となりました。会社としては、休職期間中も手当を支払い続けましたが、数か月後本人も復帰できないと判断し、会社との協議に応じ、かなりの和解金をもらって退職していきました。会社には、人員の喪失と大きな経済的負担が生じました。

メンタルヘルス問題は難しい問題です。会社としては、できるだけ従業員がメンタルヘルスに陥らないように細心の注意を支払う必要がありますが、それでも防げなかった場合には、労使双方にとってメリットのある解決案をみつけ、早めの事態収拾を図ることが必要です。

④労働問題その4:問題社員の解雇

会社の従業員の中には、いつもトラブルを起こす問題社員もいます。仕事でミスを連発する、取引先を愚弄し怒らせてしまう、他の従業員とうまくやっていけない等々、色んな問題が発生します。上司からウォーニングを発し、それを記録に残し、改善が見られない場合には、解雇せざるを得なくなるのですが、その場合には、解雇が社会的に相当であることを基礎づける証拠を固めておかなければなりません。

ところが、多くの会社では一定のプロセスは踏むのですが、注意は口頭で、年次の人事評価は、従業員とトラブルを招かないように当たり障りのない評価に終始している場合が多く、後から、人事評価資料を見直してみると、解雇を基礎づける資料が何もないという場合が多いのです。

弁護士に相談し、後日法律的に問題とならないように、しかるべきプロセスを踏み、それを証拠化しておくことが大切です。

⑤労働問題その5:ユニオン対策

中小企業では、企業内労働組合はほとんどありません。そのため、従業員が頼るのは地域に設立されたユニオンです。色々な会社に勤める従業員や退職させられた従業員が加盟しています。ユニオンにも色々あると思いますが、労働運動をしてきた人がビジネスとしてユニオンを組成するケースが多いようです。彼らの収入源が何なのかはよくわかりませんが、はユニオンに加盟してくれる従業員をたくさんリクルートできるように、残業代請求、セクハラによる損賠賠償等で高い金額を勝ち取ろうと頑張ります。労働運動の経験を有している人が戦闘的にやっているのですから、交渉相手としてはかなり手ごわいことは事実です。すぐに不当労働行為であるとか、権利の濫用だとか言って経営を厳しく非難してくるので、中々会社だけでは対応できません。経験を有する弁護士に依頼するのが、交渉をうまく取りまとめるためには必須でしょう。

⑥労働問題その6:労働審判の実際

残業代請求、ハラスメント、問題社員の解雇でのトラブルが発生すると、最初は労働基準監督署から電話がかかってくるか、弁護士名での内容証明郵便が届くことになりますが、そこで和解できないと、労働審判が提起されます。

労働審判では、労働審判委員会が構成されます。その委員は裁判官と使用者側委員、労働者側委員の3名です。原則3回の期日で終了することになっており、お互いが歩み寄り調停が成立しない限りは、労働委員会による審判が出ます。そもそも労働法が労働者側に有利に作られていることもあり、会社側は弱い立場に追い込まれる上、労働審判委員会の態度も労働者よりですから、審判になると労働者側に有利な結論が出ます。会社側としては、労働者側の立場に歩みより、早い時点で和解を成立させるのが得策です。特に、解雇無効の審判が起こされ、労働審判委員会の心証が無効に傾いている時には、時間を長引かすと、バックペイと言って、和解が成立するまでの給与を支払わされることになりますので要注意です。