①株式・株主総会その1:株主総会・株式数・議決権数
②株式・株主総会その2:支配権・経営権を維持するための黄金株・属人株
③株式・株主総会その3:株主総会決議を争う方法
④株式・株主総会その4:議決権行使を止める方法
⑤株式・株主総会その5:事業再編

企業法務は、契約書・定款・就業規則等の作成・チェック、事業承継・M&A、労働問題、債権回収、債務整理、個人情報保護、知的財産権等非常に広い分野を含みますが、これらについて別稿を立てていますので、以下の企業法務の紹介では、会社の所有者である株主の権利を規定する株式や株主総会関係の問題と会社の仕組みを規定する事業再編について紹介します。

株式会社の所有者は株主であり、彼らの意思を決定するのが株主総会ですから、株主総会・株式数・議決件数は企業法務の根幹といえます。株式会社の経営を行う取締役の選任は、株主総会で行われます。そして、選ばれた取締役が取締役会を構成し、そこで代表取締役社長が選ばれるという仕組みになっています。

株主総会での議決は、一部の重要事項を除いて、議決権の過半数で決まるとされているので、議決権数で51%を持っているかどうかが極めて重要になります。この点で、議決権総数を明らかにした株主名簿を整備しておくことは必須です。

普通株式だけしか発行されていなければ株式数=議決権数となりますが、会社法では、特定の株主が持つ株式1株に複数の議決権を与えることが認められています。例えば、株主Aが100株、株主Bが300株を有していても、Aが1株当たり7個の議決権を持つことになると、議決権ベースでは700:300ということになりますので、Aは議案を株主総会に出せば、必ず議決を通すことができるということになり、会社の支配権・経営権を握ることができます。

また、この属人株ほど強力ではありませんが、上記の例の株主Aに黄金株1株を発行し、取締役の選任、重要財産の処分等の重要事項の拒否権を持たせることもできます。株主Aは100株、株主Bは300株ですから、株主Bは重要財産処分の議案を出せば、普通株式の株主総会ではそれを通すことはできますが、黄金株の株主総会では、株主Aによって否決され、その実行を止められてしまいます。

属人株、黄金株は、まだあまり広く使われていませんが、会社の支配権・経営権を固めるために利用することは有効です。

会社の最高意思決定機関は株主総会であり、そこで議決される事項は会社にとって重要な事項です。だからこそ、その決議が争われることが起きます。

決議に瑕疵があれば、株主総会決議取消の訴え、株主総会決議無効確認請求、株主総会不存在確認請求等の訴訟を提起し、その取消、無効、不存在を確定することになります。株主総会決議取消の訴えには3か月の出訴期間がありますが、無効確認、不存在確認には出訴期間の制限がないので、いつまででも訴訟提起をすることが可能となっています。ですから、会社としては、株主総会決議を行うときは、瑕疵のないように慎重に手続きを進める必要があります。他方、会社が不当な株主総会決議をしたので、それを何とかして覆したいと考える株主等の会社関係者は、この3つの訴えの中から適切なものを選び、訴訟を提起して争っていくことになります。

会社がある株主に違法な新株発行を行い、その株主に50%以上の議決権を持たせ、その株主と結託して不当な株主総会決議を行おうとしている場合には、1年近くかかる判決を待っていることはできません。このような場合には、短期間でとりあえず議決権行使禁止をすることのできる仮処分等を行い、不当な決議が行われるのを止めることが考えられます。当事務所は、こうした特殊な会社法上の手続きにも通暁しています。

事業再編とは、持株会社を設立したり、会社の中にある事業部を別法人として切り出したり、他の会社の事業部と自社の事業部を切り出して合併させ、新しい会社を設立したりすることを言います。平成18年の会社法改正によって様々な方法が可能になり、当事務所でも企業法務サービスの一貫として取り扱うことが増えています。

事業再編が活発に行われる理由は、親会社からある事業部を別法人として切り出せば、その別法人の社長の責任と権限が明確になること、親会社からすれば別法人との関係は株主でしかないので有限責任しか負わなくなること等、会社の組織体制、経営上のメリットがあるからです。

例えば、創業者に2人の息子がいて、それぞれに会社を引き継がせたいと思うのであれば、会社分割を利用して、今の会社を製造部門と営業部門に分けるとか、主力事業が2つあれば、それぞれの事業を1つの会社に分割するということが可能です。また、いくつ持っている事業のうちの一つで競合会社と争っているが、市場が小さくなってきたので競合会社の事業部と合併させ、一つの会社としてより効率的に営業を行った方がいいという場合にも、吸収分割という方法を使って競合会社に自社の事業部をくっつけてしまうことができます。あるいは、持株会社を設立しグループ経営(つまり、持株会社傘下の事業会社の社長がそれぞれの会社の経営責任を負い、持株会社は株主として彼らを監督していく体制)に移行したいという場合には、株式移転という手法を利用すれば、その目的を達することができます。このように、会社法を使いこなしていけば、ほぼいかなる事業再編も可能ですので、会社の組織体制を変更したいという場合には、是非当事務所にご連絡下さい。