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取締役会の運営(Ⅰ)-招集通知の議題・議案とそこに記載されていない議題・議案の緊急動議

1.取締役会招集通知

取締役会の招集通知について、会社法上の規定はありません。ですので、招集通知の内容は、開催日時と場所さえ伝えるものであれば問題ありません。つまり、会社法上は、議題や議案をあらかじめ特定する必要はないということです。

ここで言う「議題」と「議案」の意味の違いですが、「議題」とは、取締役会の目的事項のことをいい、「議案」とは、議題についての具体的な事項をいいます。具体例を挙げると、「代表取締役選定の件」が「議題」、「取締役Aを代表取締役に選定する件」が「議案」となります。

 

 

2.定款・取締役会規則に基づく議題特定の効力

会社法上、議題や議案を特定する必要がないと言っても、取締役会の審議の充実を図るためには、事前に議題・議案を通知し、参考資料を配布するのが望ましいと考えられます。

そこで、多くの会社では、定款や取締役会規則において、取締役会を招集する際に、議題を通知するよう定めています。

このような定めがある場合、取締役会招集の際に目的事項である議題を通知しなければ、適法な招集通知があったとは認められないことになります。

 

 

3.招集通知で特定されていない議題の審議・決議

では、ある議題を審議・決議するとして招集された取締役会において、それ以外の議題を審議・決議することはできるのでしょうか。

結論としては、可能です。定款や取締役会規則において、あらかじめ議題を特定することを要求するのは、取締役会に出席する取締役に事前の準備の便宜を与えるためであり、また、取締役は、業務執行等に関する諸般の事項が議題となり得ることを当然に予想すべきですので、あらかじめ特定された議題に拘束されるものではないと考えられています。

 

 

4.緊急動議への準備が必要

以上をまとめると、定款や取締役会規則において、招集通知の際に議題の特定を要求する定めがある会社については、議題が特定されていない招集通知は無効となりますが、取締役会では緊急動議(取締役会招集通知で特定されていない事項の審議・決議)も認められることになります。

招集通知発出の時には、定款・取締役会規則に従う時間的余裕があるので、議題の特定が必要であるのに対し、実際の取締役会の時には、迅速・機動的な意思決定が必要となる局面もあることから、緊急動議を認める必要性があるということです。

監修者

植田統

植田 統

1981年、東京大学法学部卒業後、東京銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。
ダートマス大学MBAコース留学後、ブーズ・アレン・アンド・ハミルトンで経営戦略コンサルティングを担当。
野村アセットマネジメントで資産運用業務を経験し、投資信託協会で専門委員会委員長を歴任。
レクシスネクシス・ジャパン株式会社の社長を務め、経営計画立案・実行、人材マネジメント、取引先開拓を行う。
アリックスパートナーズでライブドア、JAL等の再生案件、一部上場企業の粉飾決算事件等を担当。
2010年弁護士登録後、南青山M's法律会計事務所に参画。2014年に青山東京法律事務所を開設。2018年、税理士登録。
現在、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論を講義。数社の社外取締役、監査役も務める。

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