不動産業と言っても、不動産の売買を仲介するところもあれば、不動産を取得し、それを賃貸等で運用するところもあります。仲介するにしろ、運用するにしろ、不動産業の一番のポイントは、いい不動産を見つけることです。その売買をして手数料を稼ぐか、自ら運用して賃料収入を得るかによらず、これが大切でしょう。
従って、不動産業の第一のポイントは、不動産の取得のための売買契約を確実に交わすことでしょう。売買契約に取消事由はなかったか、解除事由はないかという点です。相続人から不動産を売買で取得する場合もあるので、遺産分割がちゃんと行われ、相続登記が有効になされているかという点が問題となる場合もあります。
不動産業の第二のポイントは、取得した不動産の契約不適合(瑕疵)の問題です。土地を取得して建物を建設し始めたら、地中から建設ガラが出てきた、土壌汚染が発見された等という問題です。
不動産業の第三のポイントは、不動産の使用権原です。不動産の使用権原には、使用貸借と賃貸借があります。使用貸借であるとすれば、終了事由が到来していないのか、賃貸借であるとすれば解除事由はないのかという点です。使用権原がないということになれば、立退請求の問題になります。

これに関連して、当事務所で扱ってきた事例には以下のようなものがあります。

①不動産業の解決事例1-売買契約の有効性
②不動産業の解決事例2-使用貸借契約終了による建物収去土地明渡請求
③不動産業の解決事例3-賃料不払いによる賃貸借契約解除と立ち退き請求
④不動産業の解決事例4-立ち退きを受けた者を代理しての立ち退き料交渉

①不動産業の解決事例1-売買契約の有効性

クライアントは不動産業を営む会社ですが、都心部の地主が死亡したことを知り、その相続人に売ってくれないかと声をかけたところ、相続税納税のために3カ月以内に現金化したいから、価格を提示してくれと言われました。その土地の上には老朽化したビルがたっており、再開発をするためには、テナントを立ち退かせなければならず、その立退料の支払い負担と立退までにかかる時間を考慮すると、あまり高い価格で買い取ることはできないと判断し、相続税評価額相当の価格をオファーしました。すると、相続人は承諾してきたので、売買契約書を交わし、2ケ月後に決済をすることで合意しました。

その後1か月たった頃、相続人からこの土地の時価は、相続税評価額の4倍をすることを知らずに契約してしまったので、錯誤に基づいて取消をしたいと言ってきました。クライアントは、相続人にもう売買契約が成立しているので、それは受けられないと言っても相続人はガンとして譲りませんでした。そこで、当事務所の弁護士に相続人との交渉を依頼して来ました。

弁護士は、相続人に対して、内容証明郵便を送り、立ち退きに要する時間とコストから売買金額は不当なものと考えられないこと、取引の経緯から見ても相続人の側には錯誤が存在しないことを丁寧に説明しました。同時に円満解決のため、代金の20%上乗せはできることを伝えると、相続人側も理解を示し、売買契約の売買代金だけ変更することで合意が成立しました。

②不動産業の解決事例2-使用貸借契約終了による建物収去土地明渡請求

クライアントは地方都市の駅前で、3代にわたって貸しビル業を展開する者でした。初代には、長男(クライアントの父)、次男、三男の3名の子がいたが、自分の財産の大半は長男に相続させたいと考え、次男、三男は養子に出した。その後、初代が死んだ。遺言書はなかった。3名の法定相続分は同じであったが、初代の意思は次男、三男にも伝わっていたので、長男が財産の3分の2を相続し、次男、三男は6分の1ずつということで決着した。

しかし、次男は初代の生前の今から35年前に、初代の所有する好立地の駅前の土地に10階建てのビルを建て、賃貸経営をしていた。その賃料は年間1億にものぼった。しかし、次男は地代も支払わず、固定資産税のみ負担していた。

3年前にクライアントの父(初代の長男)が死んだ。その父は妻とは離婚済みであり、一人息子(クライアント)しかいなかったので、クライアントがすべてを相続することになった。クライアントは、叔父である次男とは反りが合わず、次男のビル経営をやめさせたいと思っていた。そこで、クライアントは、叔父である次男に地代を時価の水準に変更して支払うか、出ていくように交渉を始めた。叔父である次男は、クライアントの言う事を無視し、交渉は決裂したが、ある日、固定資産税の3倍程度の地代を過去にさかのぼって供託してきた。

クライアントは、当事務所の弁護士にどのように対応するべきか相談をしてきた。弁護士は、賃料の供託がされてしまったので賃貸借契約が成立していると判断される可能性はあるが、供託の前に弁済の提供が行われていないので、供託は無効で使用貸借が継続していると解釈される可能性もあることを伝えた。

クライアントは、それでも使用貸借が終了したとして退去を請求して訴訟を起こしてほしいと、当事務所の弁護士に依頼してきた。そこで、弁護士は、30年余の期間の経過による使用貸借の終了を理由として、建物収去土地明渡請求訴訟を提起した。訴訟では、供託が有効か否か、それによって賃貸借が成立しているのか否かが争点となったが、裁判所は、親族間の争いであることもあり、和解を勧めてきた。

弁護士は、仮に賃貸借と認定された場合、旧借地法の堅固建物の借地となってしまうので、当初60年、その後の更新は30年となってしまい、クライアントの存命中に土地が戻ってこない可能性が高いので、ビルを買い取ることになっても和解した方が得であることを説明し、和解することを勧めた。クライアントも納得し、ビルの買取価格でも相手と合意することができたので、和解が成立した。

③不動産業の解決事例3-賃料不払いによる賃貸借契約解除と立ち退き請求

クライアントは、父が亡くなり、父の故郷の地方都市の賃貸住宅を相続した。そこには、30年前から同じ賃借人が居住していたが、3年程前から、賃料が滞りがちになり、既に2年分の賃料の滞納となっていた。クライアントは、当事務所の弁護士に依頼し、賃借人との交渉を依頼した。弁護士は、賃借人に契約を解除するので、速やかに立ち退くように内容証明郵便を送ったが、賃借人はコロナの影響で自分の仕事がうまく行かなくなったのでしばらく待ってほしい、また、雨漏りがするので修繕しろと言って、賃料を支払おうとしなかった。そこで、弁護士はやむを得ず立ち退き訴訟を提起し、判決を得た。賃借人もさすがに観念したのか、強制執行を受ける前に、自ら立ち退くことを申し出てきたので、ようやくクライアントのもとに住宅が戻って来た。

④不動産業の解決事例4-立ち退きを受けた者を代理しての立ち退き料交渉

クライアントは、会社経営を行い、都内の一等地のビルに10坪に満たない小さなオフィスを賃借していた。周りのテナントが退去していったが、クライアントはその場所に愛着を持ち、また、賃料が安かったことから、そこから立ち退きたくなかった。特に、コロナの影響でビジネスの売上が細ってきたことから、他のビルに移り、高い賃料を毎月負担していくことはとても無理であると判断していた。従って、立ち退きをOKするとしても、できるだけ多額の立退料を得たいと考えていた。
そこで、クライアントは、当事務所の弁護士に立退料の交渉を依頼してきた。弁護士は、クライアントの事情を理解し、それをデベロッパーに十分に説明した結果、デベロッパーも理解を持ち、移転先の敷金と1年分の賃料をカバーできる金額の立退料を提供してくれると申し入れてきたので合意した。