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契約書・定款・就業規則-建物賃貸借契約のチェックポイント

賃貸借と言っても、アパートを借りる場合、オフィスを借りる場合など色々なケースが考えられますが、ここでは、オフィスを借りる場合の契約を見ていきましょう。

 

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第1条(貸室)

甲は乙に対し、●●ビルのうち、末尾契約要項⑴記載の貸室(以下「本貸室」という。)を賃貸し、乙はこれを賃借する。

2 室内取付電灯器具その他保管設備は一切現状有姿のものとする。

 

※賃貸借の対象となる貸室を定めます。契約要綱が出てきますが、ここに重要なポイントがまとめて書かれているので、よくチェックしておきましょう。

 

 

第2条 (賃貸借期間)

賃貸借期間は末尾契約要項⑷記載のとおりとする。

 

※次に、賃貸借の期間を定めています。

 

 

第3条 (使用目的)

乙は貸室を末尾契約要項⑴記載の使用目的にのみ使用し、その他の目的に使用しない。

 

※使用目的以外の使用を認めないという趣旨です。

 

 

第4条 (賃料)

賃料は末尾契約要項⑵記載のとおりとする。ただし、1月未満の賃料は日割計算とする。

 

※賃料の定めです。具体的金額は契約要綱に記載されます。

 

 

第5条 (共益費)

乙は前条に定める賃料のほかに、上下水道等の共用施設の保守・管理等の費用及び次の各号に定める費用を共益費として甲に支払う。

⑴ 共用施設の水道、光熱、空気調和に関する費用

⑵ 共用施設の清掃、衛生、塵芥処理、環境維持費

⑶ エレベーターの保守、運転費

⑷ 共用施設の保安、警備費

⑸ その他共用施設の維持管理経費

2 前項共益費は末尾契約要項⑵記載のとおりとする。

 

※共益費の負担があることを定めています。大体いくらぐらいになるかをサインをする前に確認しておきましょう。

 

 

第6条 (賃料・共益費の改定)

甲及び乙は、賃料・共益費を賃貸借期間更新時及び以後2年ごとに改定するものとする。

2 前項の改定は物価の変動、土地建物に対する公租公課の増減、近隣土地建物の賃料の変動又は土地建物の管理費の増減、その他一般経済情勢の変動等を参考にするものとし、賃料及び共益費が不相当となったと甲が認めたときは、賃貸借期間中といえども甲乙協議の上、甲はこれを改定することができる。

 

※基本2年ごとに賃料と共益費が改定されると規定しています。

 

 

第7条 (乙の負担すべき費用)

次の各号に定める費用は乙の負担とする。

⑴ 貸室使用に伴う電気料

⑵ 貸室内の清掃、衛生、警備費

⑶ 貸室内の蛍光灯、電球の取替費用

⑷ 貸室内の消火器点検、詰替費用

⑸ 貸室内の空気調和に関する費用

⑹ その他乙の貸室使用に関して生ずる一切の費用

 

※賃借人の負担する費用を定めています。

 

 

第8条 (消費税)

乙は、第4条所定の賃料、第5条所定の共益費、第7条所定の費用及びその他本契約上、乙が甲に支払うべき費用、金員のうち消費税法上課税対象とされるもの(以下「課税対象項目」という。)に課税される消費税を負担するものとし、その消費税額を課税対象項目の諸金員に付加して甲に支払う。

 

※当たり前ですが、消費税を賃借人が負担することを定めています。

 

 

第9条 (敷金)

乙が甲に預託する敷金の総額及び預託時期は、末尾契約要項⑵及び⑶記載のとおりとする。

2 甲は敷金に対して利息を付さない。

3 賃料に増減があった場合は、甲又は乙は、増減額の6倍相当額まで敷金の増額又は減額を請求することができる。

4 本契約存続中は、乙は敷金をもって賃料その他の甲に対する一切の債務との相殺を主張することができない。

5 乙に賃料の延滞その他本契約に基づく債務の不履行又は損害賠償債務があるときは、甲は敷金をこれに充当できるものとする。

6 前項により甲が敷金を乙の債務に充当した場合は、乙は遅滞なく敷金不足額を補塡しなければならない。

7 敷金は、本契約終了の場合、乙が貸室を完全に明け渡し、乙の甲に対する一切の債務(第25条に基づく金銭債務を含む。)に充当した後になお残額があれば、甲はこれを乙に返還するものとする。

8 乙は敷金に関する債権を第三者に譲渡し、又は債務の担保の用に供してはならない。

 

※敷金の定めです。具体的金額は契約要綱で定められます。大きな金額ですので、この規定はしっかりと理解しておきましょう。

 

 

第10条 (賃料等の支払い)

賃料及び共益費の支払は持参債務とし、乙は賃料を本契約締結と同時にその月分を、以後毎月末日限り翌月分を指定口座から自動振替にて支払う。

2 乙は第7条各号に定める費用につき、賃貸人からの請求額を毎月末日までに指定口座から自動振替にて支払う。

 

※賃料の支払いの方法についての規定です。

 

 

第11条 (延滞損害金)

乙が賃料その他の債務の支払を延滞したときは、甲は延滞金額に対して年14.6%の割合による損害金を乙に請求することができる。ただし、乙は当該損害金の支払により甲の契約解除権の行使を免れるものではない。

 

※賃料を延滞した場合の損害金についての規定です。

 

 

第12条 (賃借権の譲渡・転貸・同居等の禁止)

乙は貸室に係る貸借権の譲渡、形態のいかんを問わず貸室の転貸をしたり、本契約に基づく一切の権利を第三者に譲渡し、又は担保の用に供してはならない。

2 乙は営業譲渡、合併その他の形式によって本契約に基づく一切の権利を乙以外の者に包括的に承継させてはならない。

3 乙は、甲の書面による承諾を得ることなく本貸室内に他人を同居させ、又は乙以外の在室名義を表示してはならない。

 

※転貸禁止の規定です。

 

 

第13条 (登記事項又は身分等の変更の通知)

乙がその住所、商号、代表者、営業目的、資本金その他商業登記事項又は身分上に重要な変更があったときは、乙は遅滞なく書面をもって甲に通知するものとする。

 

※賃貸人にとっては、賃借人が誰であるかを知っておくことは重要ですので、登記事項に変化があった場合には、通知しろとするものです。

 

 

第14条 (善管注意義務)

乙は本貸室及び○○ビルの玄関、廊下、階段、昇降機、湯沸所、便所その他の共同使用部分を善良なる管理者の注意をもって使用しなければならない。

 

※貸室等の使用にあたり善管注意義務を定めています。

 

 

第15条 (造作・設備工事等)

乙が諸造作・設備の新設、付加、除去、改造又は取換えを行い、その他貸室又は建物の原状を変更する場合は、乙はあらかじめ書面をもって甲にその工事を依頼するものとし、その工事に要する費用は全て乙の負担とする。

2 乙が新設・付加した諸造作・設備に賦課される公租公課は宛名名義のいかんにかかわらず乙の負担とする。

3 乙は、貸室内に金庫・電子計算機等の重量物又は電気容量の大きい機器、常時使用の機器等を搬入、設置、増設又は移動する場合は、あらかじめ甲の書面による承諾を得なければならない。

 

※賃借人が造作工事等をする場合には、あらかじめ賃貸人に届出よとするものです。3項では、賃貸人の承諾を要する事項が書かれています。

 

 

第16条 (修理)

本貸室及び甲の所有に係る諸造作・設備の破損又は故障により修理の必要を生じ、又は生ずるおそれがあるときは、乙は速やかに甲に通知する。

2 前項の通知により甲が必要と認めた修理は、甲がその費用を負担して実施する。ただし、本貸室内の天井、壁の塗装替、床の張替等の修理又は乙の責めに帰すべき事由による修理は、乙がその費用を負担して実施する。

3 乙は本貸室、諸造作・設備の修理を、その負担と責任において実施する場合であっても、その修理方法については、あらかじめ甲の書面による承諾を得るものとする。

 

※これは修理を行う場合に、賃借人は賃貸人に通知せよと定め、その負担をどちらが行うかを定めたものです。

 

 

第17条 (損害の賠償)

乙又はその使用人、請負人の故意又は過失により甲又は他の賃借人等の第三者に損害を与えた場合は、乙はこれによって生じた一切の損害を賠償しなければならない。

 

※賃借人の損害賠償責任を定めたものです。

 

 

第18条 (免責)

甲の責めに帰することのできない事由又は甲が行う修理、変更、改造工事等により、乙が被った不便、損害について、甲はその責めを負わない。

 

※賃貸人の免責事由を定めています。

 

 

第19条 (甲の立入点検)

甲又は甲の指定する者は、建物又は貸室の保守管理上必要のあるときは、あらかじめ乙に通知した上で本貸室に立ち入り、これを点検し適宜の措置を講ずることができる。ただし、緊急又は非常の場合、甲があらかじめこの旨を乙に通知できないときは、事後速やかに乙に通知するものとする。

 

※賃貸人が賃借人の貸室に立入点検できることを定めています。

 

 

第20条 (使用細則等の遵守)

甲が末尾に定めた使用細則は本契約の付帯契約として乙はこれを遵守しなければならない。

 

※賃借人が使用細則を遵守しなければならないことを定めています。

 

 

第21条 (契約の継続)

甲又は乙が、期間満了6か月前までに各相手方に対し更新しない旨の通知をしたときを除き、本契約は期間満了の翌日から更に2年間同一の条件をもって継続するものとし、以後も同様とする。

 

※いわゆる自動更新条項です。

 

 

第22条 (期間内解約)

賃貸借期間中に本契約を解除しようとするときは、乙は、解約日の6か月前までに甲に対し書面によりその予告をしなければならない。

2 乙は前項による解約日を甲の承諾なくして変更することはできない。

3 乙は予告に代えて6か月相当分の賃料を甲に支払い、即時解約することができる。

 

※契約期間中でも、乙が6か月前予告で解除できることを定めています。3項で6か月分の賃料を支払うことで即時解約ができることも定めています。

 

 

第23条 (契約の終了)

天災地変その他不可抗力により、●●ビルの全部又は一部が滅失若しくは破損して本貸室の使用が不可能となった場合には、本契約は当然に終了するものとする。

 

※天変地異等の不可抗力による使用不能を契約の終了事由としています。

 

 

第24条 (契約の解除)

乙が本契約又はこれに付随して締結した契約の各条項に違反したときは、甲は何らの催告なしに本契約を解除することができる。

2 前項により本契約が解除された場合、乙は第4条の賃料の6か月分相当額を甲に支払うものとする。ただし、甲の乙に対する損害賠償の請求を妨げない。

 

※賃借人の契約違反による、賃貸人からの無催告解除を定め、さらに2項で6か月分の賃料を違約金として支払うものとしています。

 

 

第25条 (明渡し)

本契約終了と同時に、乙は、次の定めに従い本貸室を明け渡す。

⑴ 乙は、乙の費用により新設・付加した諸造作・設備及び乙所有の物件を乙の費用をもって収去し、乙の要請により甲が新設・付加した物件について、甲の要求があるときは、乙の費用をもってこれを取り外し、甲に引き渡すとともに、本貸室、諸造作・設備の破損、故障、乙の特別な使用方法に伴う損耗を乙の費用をもって修復し本貸室を原状に復して甲に明け渡す。

⑵ 本契約終了と同時に、乙が本貸室を原状に復さないときは、甲は自ら諸造作・設備等を収去し、かつ、破損、故障、乙の特別な使用方法に伴う損耗を修復し、その費用を乙に請求することができる。

⑶ 本契約が終了し、乙が貸室を明け渡した後に貸室内又は建物内に残置した物件があるときは、甲は乙がその所有権を放棄したものとみなして任意にこれを処分することができる。

⑷ 本契約終了と同時に、乙が本貸室を明け渡さないときは、乙は本契約終了の翌日から明渡し完了に至るまでの賃料及び共益費相当額の価額の損害金並びに電気料等の諸費用相当額を甲に支払い、かつ、明渡し遅延により甲が被った損害を賠償しなければならない。

⑸ 乙は、本貸室の明渡しに際し、その事由・名目のいかんにかかわらず本貸室、諸造作・設備等について支出した諸費用の償還又は移転料、立退料、権利金等一切の請求をしない。また、本貸室内に乙の費用をもって設置した諸造作・設備等の買取りを甲に請求しない。

 

※明渡の方法と費用の負担を定めたものです。(1)の原状復帰費用は高額になる場合が多いので、要注意です。

 

 

第26条 (意思表示等の方法)

本契約に基づいて、甲・乙間で行う申込み、承諾、解約予告等の意思表示及び通知は全て書面をもって行うものとし、書面によらない限りその効力を主張できないものとする。

 

※契約の申込み、承諾、解約予告等をすべて書面で行わなければならないことを定めています。

 

 

第27条 (管理者の指定)

甲は建物を第三者(●●)に管理させるものとし、乙はあらかじめこれを承諾するものとする。

 

※管理者の定めです。

 

 

第28条 (合意管轄)

本契約に関し、甲・乙間に紛争を生じたときは、●●地方裁判所を管轄裁判所とすることを甲及び乙はあらかじめ合意する。

 

※裁判管轄を●●地方裁判所とすることに合意したとするものです。

 

 

第29条 (準拠法)

本契約については、準拠法を日本法とする。

 

※日本法に基づいて解釈されることを定めています。

 

 

第30条 (保証人)

保証人は、本契約に基づく乙の債務を乙と連帯して履行する責めに任ずる。

2 前項の保証人の債務は第21条によって本契約が継続している間は消滅しない。

 

※連帯保証人の責任を定めています。

 

 

第31条 (信義則)

本契約の各条項を甲、乙双方誠実に履行するものとし、本契約に定めのない事象が発生し本契約の各条項に疑義が生じた場合には、甲、乙誠意をもって協議解決するものとする。

 

※誠意をもって協議すると定めたものですが、あまり意味はありません。

 

 

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少し長いですが、建物賃貸借契約を解説しました。オフィスを借りるときの負担は非常に大きいので、その契約条件を正確に理解しておくことは大変重要です。すでに、オフィス賃貸借契約を交わしている方は、もう一度契約条件を見直しておいた方がよいかと思います。

監修者

植田統

植田 統

1981年、東京大学法学部卒業後、東京銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。
ダートマス大学MBAコース留学後、ブーズ・アレン・アンド・ハミルトンで経営戦略コンサルティングを担当。
野村アセットマネジメントで資産運用業務を経験し、投資信託協会で専門委員会委員長を歴任。
レクシスネクシス・ジャパン株式会社の社長を務め、経営計画立案・実行、人材マネジメント、取引先開拓を行う。
アリックスパートナーズでライブドア、JAL等の再生案件、一部上場企業の粉飾決算事件等を担当。
2010年弁護士登録後、南青山M's法律会計事務所に参画。2014年に青山東京法律事務所を開設。2018年、税理士登録。
現在、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論を講義。数社の社外取締役、監査役も務める。

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