公開日:  更新日:

契約書・定款・就業規則-契約書の重要性と注意点

中小企業間の取引は、信頼関係をベースに仕事を行うことが多いと思います。その結果、ちゃんとした契約書を締結せずに、注文書・請書ベースで取引が進められています。中には、口約束だけで、なんとなく取引が進められているという場合も、実際には多いはずです。こうした取引形態でも、トラブルが起こりさえしなければ、何の問題もありません。ところが、トラブルが発生すると、お互いの契約でどのように定めていたのかが、問われることになります。

 

例えば、商品のグレードがAランクのはずが、Bランクの商品が納入されたので、契約を解除したい、納入期限が3月末日であったのに、それに遅れたので、契約を解除した、支払期限が5月末日であったのに、6月末日まで遅れたから、遅延損害金14.6%を請求したいなどと言うことが起こるのです。

 

この時、問題になるのは、当初の契約がどうなっていたのかです。商品のグレードは明確に定められていたのか、納入期限は決まっていたのか、遅延損害金は民法上の3%ではなく、14.6%と決まっていたのか、という点です。

 

口約束では、これを証明することはできない(録音でもしていない限り)ので、相手が否定する限り、裁判所で勝訴することは難しくなります。したがって、自分の権利を守るためにも、ちゃんと契約書を交わし、契約条件を明らかにしておくことが大切になります。

 

常時、取引をする相手であれば、基本契約を交わし、個々の取引は注文書と請書で処理するようにするべきですし、一回切りの取引であるときは、取式条件を明確に定めた契約書と締結するべきです。最近は、電子契約もかなり広まってきましたので、文書の郵送ベースでのやり取りが面倒くさい、時間がかかるという場合には、積極的に電子契約を使っていくべきでしょう。

 

ただ、中小企業の中には電子契約に対応できないところもありますので、紙ベースの契約書も締結できないという場合には、電子メールでもラインでも書いたものがあればいいので、何らかの証拠を残しておくべきです。

 

この場合、相手方の書いた電子メールかラインが必要で、こちらから一方的に送り付けたものでは証拠とならないことに注意してください。

監修者

植田統

植田 統

1981年、東京大学法学部卒業後、東京銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。
ダートマス大学MBAコース留学後、ブーズ・アレン・アンド・ハミルトンで経営戦略コンサルティングを担当。
野村アセットマネジメントで資産運用業務を経験し、投資信託協会で専門委員会委員長を歴任。
レクシスネクシス・ジャパン株式会社の社長を務め、経営計画立案・実行、人材マネジメント、取引先開拓を行う。
アリックスパートナーズでライブドア、JAL等の再生案件、一部上場企業の粉飾決算事件等を担当。
2010年弁護士登録後、南青山M's法律会計事務所に参画。2014年に青山東京法律事務所を開設。2018年、税理士登録。
現在、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論を講義。数社の社外取締役、監査役も務める。

無料相談を実施中