小売業の特徴は、顧客に直接接しているところにあります。従って、多数の顧客の情報を持っています。その顧客が色々な注文を付けてきます。また、小売業では多くの従業員を雇用しており、また、雇用環境が必ずしも良くないので、労使のトラブルも起きがちです。その結果、小売業では、個人情報管理の問題、クレーマー対策、労使問題等が起こってきます。

①小売業の解決事例1-個人情報保護法改正対応
②小売業の解決事例2-クレーマー対策
③小売業の解決事例3-事業再編による解雇とユニオン対応

①小売業の解決事例1-個人情報保護法改正対応

ある外資系企業の日本法人は、商品を顧客に直接販売していることから多量の個人データを取得保存していた。しかし、その管理は不十分で、各部署がその部署が取得した個人データを保管するという形になっており、会社全体としての個人データ管理体制が構築されていなかった。プライバシーポリシーについても、会社として6年前に一般的なフォームから即席で作成したものはあったが、最近の改正には対応できていないという状況であった。

そこで、この会社は個人情報保護法改正への対応を行うために、当事務所の弁護士に依頼した。弁護士は、会社の各部署に対してヒアリングを行い、どのようなデータをどの程度取得保管しているのか、その管理はどう行っているか、特にデータを海外に移動していないかを聞いた。そこで判明したことは、データは日本法人のサーバーに保管されているが、一部海外からのアクセスも可能となっていたので、そのシャットダウンを図らなければならないということが判明した。また、データ取得時の同意書も未整備であったことがわかった。

弁護士は、こうした問題点を是正するように指導し、同時にプライバシーポリシーを改訂し、個人情報保護管理規程を作成した。最後に各部署の個人情報管理責任者を集め、個人情報の管理のプロセスの全体像についてのセミナーを実施した。

②小売業の解決事例2-クレーマー対策

アパレル業を営む会社が販売した商品に針の破片が残っていたため、怪我をしたと言うクレームが入った。会社のクレーム担当が顧客から医者の連絡先を教えてもらい連絡すると、確かにそうした事故があったことが確認できたので、その費用はすべて会社の方で持つ旨の連絡を医者と顧客に伝えた。

ところが、医者からの請求には、美容関係の治療費も含まれていたので、会社から、直接のものに限定してほしい旨を伝えると、顧客は、言い方が気に食わない、慰謝料を支払わないとネットに書き込むぞと態度をエスカレートさせた。

そこで、会社は当事務所の弁護士に相談した。弁護士は内容証明郵便を出し、顧客に対して、会社は治療費と慰謝料として○万円を支払う用意があるが、顧客がこれ以上態度をエスカレートさせ恐喝まがいの行為を続けるようであれば刑事告訴を行う旨を通知した。顧客は態度を改め、治療費と慰謝料(世間相場の金額)を支払うことで決着した。

③小売業の解決事例3-事業再編による解雇とユニオン対応

ある外資系企業の日本法人が、日本で事業の大幅な縮小を決めた。撤退ではないため、一部の社員は新たに設立する会社で継続雇用することになった。解雇対象となった大多数の従業員がユニオンに駆け込み、日本法人はユニオンと交渉をすることになり、当事務所の弁護士にその交渉を依頼してきた。

この弁護士は英語にも堪能であるので、外国本社に日本の労働法による規制を説明し、簡単に解雇は行えない、一部の従業員を残すということになると判例上認められた整理解雇も使えない、となると、一定額の退職金を支払ってユニオンの同意を得るしかないことを説明し、外国本社の了承を得た。その後、7~8か月の交渉を重ね、ようやくユニオンからの同意を得ることに成功し、日本法人の事業縮小はスムーズに行われた