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青山東京法律事務所 代表
企業活動では、契約書の作成や労務管理などの法的判断が日常的に求められます。問題が表面化してから弁護士を探す方法もありますが、相談先の選定や事情説明に時間がかかり、初動が遅れるかもしれません。
顧問弁護士と契約したうえで継続的に関係を築いておけば、自社の事業や組織を理解した立場から助言を受けやすくなります。
本記事では、顧問弁護士の役割や契約するメリットを解説します。
目次
顧問弁護士とは
顧問弁護士とは、企業や個人事業主などと継続的な顧問契約を結び、法律相談や企業法務を支援する弁護士のことです。トラブルが発生したときにだけ依頼するスポット契約とは異なり、日ごろから相談を重ねられるため、事業内容や社内体制、取引上の課題を把握してもらいやすい特徴があります。
小さな疑問の段階で相談することにより、紛争を未然に防ぐ予防法務と、問題発生後の迅速な対応の両面で支援を受けられます。
企業内弁護士との違い
顧問弁護士は、法律事務所などに所属しながら外部の立場で企業と契約する弁護士です。一方、ここでいう企業内弁護士は、企業に雇用されて社内で法務を担当する企業内弁護士を指します。
どちらも経営判断や契約、労務問題を法的に支える点は共通していますが、企業との関係や働き方が異なる点には注意が必要です。
企業内弁護士は社内事情を把握しやすく、日常業務へ深く関与できる反面、採用や給与、教育などの固定的な負担が生じます。顧問弁護士であれば、必要な支援内容に応じて契約プランを選びながら、社外の立場から法的な助言を受けられます。
相談量や法務課題の専門性、予算を踏まえて、自社に合う依頼先を検討することが大切です。
顧問弁護士の主な役割・業務内容
ここで改めて、顧問弁護士の基礎知識を押さえていきましょう。企業法務における顧問弁護士の主な役割を、5つに分けて紹介します。
【顧問弁護士の役割と業務内容】
- 契約書の作成
- 就業規則の制定
- 法務部としての活動
- 事業・契約内容のチェック
- 法的トラブルへの対応
契約書の作成
顧問弁護士の役割として、まず挙げられるものが契約書の作成や内容の確認です。
顧問弁護士には、取引内容に合わせた契約書の作成にくわえ、相手方から提示された契約書のリーガルチェックを依頼できます。
企業は、売買契約や業務委託契約、秘密保持契約、雇用契約など、さまざまな場面で契約書を取り交わします。
その際、契約書をひな形のまま使用すると、実際の取引や業界慣行に合わず、問題が起きた際に想定した対応を取れない場合があります。普段から自社の事業を理解している顧問弁護士であれば、取引の目的や相手方との関係も考慮し、修正案や交渉方針を提示してもらいやすいでしょう。
契約締結前に確認する仕組みを設けることで、紛争リスクの低減につながります。
就業規則の制定
顧問弁護士には、就業規則や社内規程の整備を法的な観点から支援する役割もあります。その業務内容として挙げられるのが、就業規則の制定です。
就業規則は、労働時間や賃金、休職、服務規律、懲戒、退職など、労使双方に関わる重要なルールです。
常時10人以上の労働者を使用する事業場には、就業規則を作成し、過半数労働組合または過半数代表者の意見書を添えて所轄の労働基準監督署へ届け出なければなりません。
法律上の形式を満たしていても、実際の勤務形態や人事制度と内容が合っていなければ、運用時のトラブルにつながります。
顧問弁護士と契約していれば、法令に適合した規程の作成や変更手続きについて相談できるため、トラブルの予防につなげやすくなります。
テレワークや副業など、働き方の変化に応じて定期的に見直すことも顧問弁護士の役割です。
参照元:石川労働局労働基準部監督課「* * 就業規則作成・届出に関する FAQ* *」
法務部としての活動
専任の法務担当者を置くことが難しい企業では、顧問弁護士が社外法務部のような役割を担います。日常的な法律相談を受けるほか、契約管理のルール、社内の相談フロー、コンプライアンス研修、個人情報や営業秘密の管理方法などを整え、担当者だけに判断が集中しない体制づくりを支援します。
ただし、顧問弁護士へ契約管理や社内承認などの実務をすべて任せられるとは限りません。社内担当者が事実関係や事業上の目的を整理し、弁護士が法的な観点から助言するように役割を分けると、法務機能を効率的に運用できます。相談窓口や回答期限、顧問料に含まれる作業範囲をあらかじめ決めておくことがポイントです。
事業・契約内容のチェック
新商品や新サービスを始める際は、複数の法令が関係する場合があります。法令に違反した状態で事業を継続すると、行政処分や刑事罰といったリスクが生じるため、事業開始前に法的なリスクを確認することが重要です。
顧問弁護士と契約していれば、新事業に伴う事業スキームや利用規約、プライバシーポリシー、許認可の要否を確認したうえで、想定される法的リスクを整理してもらえます。
また、継続的な取引で信用不安や契約条件の変更が生じた場合には、契約を続けるべきか、担保や保証を求めるべきかといった判断も相談可能です。法律上問題がないかを確認するだけでなく、事業目的を実現しながらリスクをどこまで許容するかを検討できる点が、継続的に企業を理解する顧問弁護士の強みといえるでしょう。
法的トラブルへの対応
代金の未払いや契約違反、顧客からのクレームなどが起きた場合、顧問弁護士は事実関係と証拠を整理し、初動対応を助言します。相手方への回答、内容証明郵便の送付から訴訟まで、状況に応じた選択肢を示すことも重要な役割です。
特に労働紛争時は、不用意な発言や証拠の削除が後の対応へ影響する可能性があります。顧問弁護士が自社の取引経緯や担当部署を把握していれば、説明の時間を短縮し、必要な資料を整理しやすくなるでしょう。
なお、訴訟や大規模な調査は顧問料と別料金になることがあるため、有事の対応範囲も契約時に確認しておく必要があります。
顧問弁護士と契約するメリット
顧問契約を結ぶと、法律問題が起きたときの対応だけでなく、平時の経営判断や社内体制の整備にも知見を活用できます。顧問弁護士と契約する主なメリットは次の3つです。
【顧問弁護士に依頼するメリット】
- 気軽に相談できる
- コストの抑制につながる
- 信頼性の向上が期待できる
気軽に相談できる
顧問弁護士と契約していれば、日常的に発生するさまざまな法的な疑問を気軽に相談し、法的なアドバイスを受けられます。
単発で依頼する場合は、依頼先を選定する手間がかかるだけでなく、会社概要や問題の経緯を一から説明しなければなりません。
日ごろの小さな疑問を早めに相談する習慣があれば、契約条件の見落としや不適切な労務対応を修正し、重大なトラブルへ進む前に対策を講じられるでしょう。経営者だけでなく、法務・総務・人事などの担当者も相談できる体制にすると、判断を抱え込む状況を防げます。
ただし、相談者の範囲や月ごとの相談時間は契約ごとに異なるため、事前確認が必要です。
コストの抑制につながる
顧問弁護士との契約によって、法務にかかるコストを抑えられる場合があります。
法務部門を新設して専門人材を採用する場合、給与や社会保険料、教育費などが継続的にかかります。顧問弁護士を活用すれば、社内に大規模な法務部を設けなくても、必要な場面で専門的な助言を受けられるため、法務体制の整備にかかるコストを抑えやすくなるでしょう。
また、弁護士に単発で依頼する場合は相談料が毎回発生するため、相談の回数が増えるとその分コストがかかることになります。結果的に、月額制の顧問弁護士よりも費用がかさむ可能性があるのです。
ただし相談回数が少ない企業では、スポット依頼のほうが負担を抑えられる場合もあります。月々の相談量と顧問料に含まれる業務を比較し、継続契約の費用対効果を判断することが大切です。
信頼性の向上が期待できる
顧問弁護士の助言を受けて契約や社内ルールを整備することは、法令遵守を重視する企業姿勢を示す要素になります。取引先との契約交渉や金融機関・投資家への説明において、法務リスクを管理する体制があると示せれば、法務リスクへの対応体制を説明する材料の一つになります。
また、顧客からのクレームや不祥事に対して一貫した手順で対応できると、問題の拡大や信用低下を防ぎやすくなるでしょう。
ただし、顧問弁護士がいるだけで企業の適法性が保証されるわけではありません。助言を社内で共有し、実際の業務へ反映する仕組みを整えてこそ、ガバナンスやコンプライアンスの強化につながります。
顧問弁護士の費用相場
顧問弁護士と契約する場合、毎月固定の顧問料を支払うのが一般的です。顧問料には公的なルールはなく、具体的な金額は弁護士事務所側で自由に設定できます。
過去の日本弁護士連合会のアンケートでは、中小企業の月額顧問料として3万~5万円が多いとされ、この金額が一つの目安として紹介されることがあります。ただし、同調査は2009年度のものであり、現在の料金を一律に示すものではありません。
近年は、相談時間を限定した低額プランをはじめ、法律事務所によってさまざまな料金プランが設定されています。訴訟や労働審判、大規模な社内調査などは、顧問料とは別に費用が発生するケースも少なくありません。
契約前に、月額料金だけでなく、業務範囲、追加費用、最低契約期間、解約条件まで書面で確認しましょう。
参照元:日本弁護士連合会「アンケート結果にもとづく中小企業のための弁護士報酬の目安(2009年度アンケート結果版)」
顧問弁護士を選ぶ際のポイント
顧問弁護士は継続的に経営や社内問題を相談する相手であるため、自社の環境やニーズに合うところと契約しなければなりません。
次の3つの観点から、自社との相性を確認しましょう。
【顧問弁護士を選ぶ際のポイント】
- 事務所の規模
- 自社の業界の実績
- コミュニケーションの取りやすさ
事務所の規模
法律事務所の規模は、対応できる分野や緊急時の体制に関わります。複数の弁護士が所属する事務所では、担当者が不在でも別の弁護士が対応できたり、労務や知的財産、M&Aなど、各分野の知見を組み合わせたりできる場合があります。一方、小規模な事務所でも、担当弁護士との連絡の取りやすさや柔軟な対応を強みとしている場合があります。
しかし重要なのは、規模の大小そのものではなく、自社が求める対応を継続できる体制があるかどうかです。連絡が取れる時間帯や緊急時の窓口、専門外の問題が起きた際の連携先などを確認しましょう。
支店や海外拠点がある企業では、対応地域や外国法務への連携体制も選定材料になります。
自社の業界の実績
企業法務の経験が豊富でも、すべての業界に同じように対応できるとは限りません。
たとえば、IT・医療・建設・金融といった分野には、特有の規制や許認可があります。自社と同じ業界や近い事業モデルの支援実績がある弁護士なら、論点を理解してもらいやすく、実務に即した助言が期待できるでしょう。
面談では、自社が相談したい分野の経験を確認します。
ただし、守秘義務の関係で具体的な顧客名や案件内容の開示に制約があるため、すべての情報が得られるわけではありません。公開実績だけで判断せず、想定事例を伝えたうえで、どのような進め方を提案するのか確認しましょう。
コミュニケーションの取りやすさ
顧問弁護士は、問題が小さい段階から相談できる存在であることが理想です。
そのため、専門知識だけでなく、質問しやすい雰囲気や説明のわかりやすさ、返信の速さも重要です。
法律用語を並べるだけではなく、選択肢ごとのリスクや事業への影響を整理し、経営者や担当者が判断できるかたちで説明してくれるかを確認してください。
あわせて、利用できる連絡手段や通常の回答期限、緊急時の対応方法も確認しておきたいポイントです。
長く関わる相手だからこそ、率直に相談でき、社内の価値観や経営方針を尊重してくれる弁護士を選びましょう。
顧問弁護士と契約するタイミング
顧問契約は、訴訟やクレームが起きてからではなく、法的課題が増える前に検討することが理想です。
具体的には以下のタイミングを参考にしてみてください。
【顧問弁護士と契約するタイミングの例】
- 会社を設立したとき
- 従業員を採用するとき
- 取引先が増えたとき
- 新規事業・新サービスを始めるとき
- 資金を調達したいとき
- M&Aを検討するとき
- 海外進出を予定しているとき
上記のほか、経営者や担当者がインターネットで法令を調べる時間が増えたり、同じ種類のクレームや労務相談が繰り返されたりする状況も、法務体制を見直すサインです。
初めて顧問弁護士と契約する際は、最初から高額なプランを選ぶ必要はありません。複数の法律事務所と面談し、役割と費用を比較したうえで判断しましょう。
顧問弁護士は企業の法務を継続的に支える役割がある
顧問弁護士は企業運営に関わる法務対応などを通じて、企業の予防法務と紛争対応を支える存在です。普段から自社の状況を共有しておけば、小さな疑問を相談しやすくなり、有事にも必要な対応を速やかに整理できます。
ただし、料金や対応範囲、得意分野、連絡方法は法律事務所ごとに異なります。自社が相談したい内容と頻度を明確にし、業界への理解やコミュニケーションの取りやすさも含めて比較することが大切です。
顧問弁護士との契約をお考えであれば、青山東京法律事務所をご検討ください。
青山東京法律事務所では、顧問弁護士をはじめ、訴訟・紛争や労働問題、事業承継・M&Aなどの企業法務を取り扱っています。初回面談は無料ですので、顧問契約を検討している方はご相談ください。
監修者
植田 統 弁護士(第一東京弁護士会)
東京大学法学部卒業、ダートマス大学MBA、成蹊大学法務博士
東京銀行(現三菱UFJ銀行)で融資業務を担当。米国の経営コンサルティング会社のブーズ・アレン・アンド・ハミルトンで経営戦略コンサルタント。
野村アセットマネジメントでは総合企画室にて、投資信託協会で専門委員会委員長を歴任。その後、レクシスネクシス・ジャパン株式会社の日本支社長。
米国の事業再生コンサルティング会社であるアリックスパートナーズでは、ライブドア、JAL等の再生案件を担当。
2010年弁護士登録。南青山M's法律会計事務所を経て、2014年に青山東京法律事務所を開設。2018年、税理士登録。
現在、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論の講義を行う他、Jトラスト株式会社(東証スタンダード市場)等数社の監査役も務める。





