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下請法違反の罰則

下請法違反の疑いがある親事業者は、公正取引委員会による調査の対象となり、罰則を受ける可能性があります。

Ⅰ 是正勧告と課徴金

調査の結果、違反が発覚すると、公正取引委員会から是正勧告を受ける可能性があります。是正勧告に従わないと、独占禁止法違反(不公正な取引方法)によって課徴金納付命令を受けることもあり得ます。

また、以下の行為については刑事罰の対象とされています。法定刑はいずれも「50万円以下の罰金」が科されます(下請法第10条、第11条)。法人の代表者・代理人・使用人その他の従業者による違反については、法人にも同様に「50万円以下の罰金」が科されます(下請法第12条)。

① 書面交付義務違反

② 書類の作成・保存義務違反

③ 公正取引委員会に対する報告の拒否、虚偽報告、検査妨害等

危機管理・不祥事対応に関する

Ⅱ 公正取引委員会による調査

取引先から下請法違反で告発された場合、公正取引委員会による調査が行われることがあります。

(1)下請法違反に関する公正取引委員会の調査の概要

公正取引委員会による下請法違反の調査の内容は、以下のとおりです(下請法第9条第1項)。

① 下請法が適用される取引に関する報告の要求

② 事務所・事業所への立ち入り調査(帳簿書類その他の物件の検査)

親事業者は、公正取引委員会による報告の要求および検査を拒否してはなりません。報告の拒否・虚偽報告・検査妨害などについては刑事罰の対象となります(下請法第11条)。

(2)行政調査と犯則調査の違い

公正取引委員会による下請法違反の調査は「行政調査」であり、「犯則調査」ではないとされています(下請法第9条第5項)。

行政調査とは、行政上の監督処分の要否を判断するために行われる調査です。これに対して犯則調査は、刑事訴追の要否を判断するために行われる調査です。

行政調査である公正取引委員会の調査においては、犯則調査とは異なり、物件の差し押さえなど直接強制の手段が認められていません。しかし、調査に応じない場合は刑事罰が科されるため、誠実に対応することが求められます。

Ⅲ 下請法違反の調査に関して企業が対応すべきこと

公正取引委員会から下請法違反に関する調査の連絡を受けた企業は、状況に応じて以下の対応を行うべきです。

(1)事実確認・社内調査

まずは違反の疑いを指摘された取引の内容を精査し、事実確認を行う必要があります。

取引に関与した従業員などに対しても適宜事情聴取を行い、本当に違反があったのか、どの程度重要な違反であるのかなどを調査する。

(2)弁護士への連絡

下請法違反に当たるかどうかやどのように対応すべきかなどの判断については、判断しにくい事柄もあるため、法律の専門家である弁護士にもアドバイスを求める。

弁護士に連絡すれば、公正取引委員会に対する報告内容や、立ち入り調査時の対応についてもアドバイスしてもらえる他、必要に応じて、立ち入り調査時に、弁護士が立ち会う場合があります。

(3)調査当日の対応

公正取引委員会による立ち入り調査が行われる場合は、下請法の対象取引に関する事情を知っている担当者及び責任者を同席させたうえで、調査官の指示に従って協力っする。検査の拒否・妨害・忌避は刑事罰の対象となるため、誠実に調査へ協力することが大切です。

(4)対応状況の対外的発信

下請法違反によって厳しい処分が予想され、その事実が報道されることが見込まれる場合は、対応状況を対外的に発信することも検討します。

適切に情報開示を行うことが、株主や取引先との関係で信頼回復につながるものと思います。

Ⅳ 企業間取引のルール(独占禁止法、下請法の諸問題)については青山東京法律事務所へ

独占禁止法、下請法等によって規制される企業取引のルールは複雑で、多様な行為が禁止されています。

その上、取引当事者が、規制をすり抜けるため、複雑な取引スキームを組んでいる場合もあり、それがどの禁止行為に当たるのか、当たらないのかを認定することも難しいものとなっています。

その一方、企業取引のルールに抵触すると、公正取引委員会の勧告を受け、罰金を課されることもありますので、ルールに従って公正な取引に努めることは、企業の責務となっています。

当事務所では、これまでの顧問弁護士、企業法務問題の解決を通じて、多くの経験を有していますので、企業取引のルールの問題に直面した方は、是非青山東京法律事務所へご相談ください。

監修者

植田統

植田 統   弁護士(第一東京弁護士会)

東京大学法学部卒業、ダートマス大学MBA、成蹊大学法務博士

東京銀行(現三菱UFJ銀行)で融資業務を担当。米国の経営コンサルティング会社のブーズ・アレン・アンド・ハミルトンで経営戦略コンサルタント。 野村アセットマネジメントでは総合企画室にて、投資信託協会で専門委員会委員長を歴任。その後、レクシスネクシス・ジャパン株式会社の日本支社長。 米国の事業再生コンサルティング会社であるアリックスパートナーズでは、ライブドア、JAL等の再生案件を担当。

2010年弁護士登録。南青山M's法律会計事務所を経て、2014年に青山東京法律事務所を開設。2018年、税理士登録。

現在、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論の講義を行う他、Jトラスト株式会社(東証スタンダード市場)等数社の監査役も務める。

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