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会社に顧問弁護士は必要?主な役割・メリットと費用相場を確認
企業は経営を行う上で、さまざまな法律を遵守しなければなりません。法的な対応を誤ると、大きなトラブルに発展する可能性もあります。会社や社員を守りたいと考えるなら、顧問弁護士との契約を検討することが有効です。
しかし、「顧問弁護士とは何か」「どのような業務を任せられるのか」が分からないと、積極的に検討しづらいものです。
そこで本記事では、顧問弁護士の概要や、いない場合のリスク、費用相場などを解説します。顧問弁護士について理解を深めた上で検討したい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
顧問弁護士とは
顧問弁護士とは、会社専属の弁護士として、継続的に会社の問題や悩み、トラブルをサポートする存在です。
単に問題発生時の法的解決を担うだけでなく、会社の内部事情にも精通し、将来起こり得るトラブルの予防や、法律に関する不安・疑問への対応も業務範囲に含まれます。
会社は、株主総会の運営、取引先との契約書の作成、従業員との労働問題など、さまざまな場面で法律と関わりますが、専門性が高いため顧問弁護士の助けなしでは対応が難しいことも多いでしょう。
顧問弁護士は、法律の専門家として会社を支える重要な存在です。
顧問弁護士がいない会社はどうなってしまうのか
会社によっては顧問弁護士がいないケースもあるでしょう。
ですが、何かトラブルが発生した際に迅速な対応ができなくなってしまう恐れがあります。
顧問弁護士がいない場合に考えられる以下のリスクを比較検討しておきましょう。
法的トラブルが発生した際、自社でのみ対応してしまい問題が大きくなる
顧問弁護士がおらず、弁護士にスポット(単発)での依頼もしないとなると、何か法的トラブルが発生した際に自社で対応しなければなりません。
ですが、法律に関する問題は専門性が高く難しいため、
間違った対応をしたがために問題が大きくなってしまうこともあるでしょう。
対応の仕方や内容によっては、企業の評判を著しく落としてしまうことも想定されます。
契約書のリーガルチェックが不十分となり、自社に不利な条件で契約してしまう
取引先から契約書を提示された場合、弁護士によるリーガルチェックがなければ自社にとって不利な条件で契約してしまう恐れがあります。
リーガルチェックとは、法的な観点から契約書の内容を精査し、企業がこうむるリスクを未然に防ぐために欠かせない確認作業です。
顧問弁護士がいれば契約書の内容を確認してもらえるので、取引先に修正してもらわなければならないポイントが明確にわかります。
契約を結んでしまってから自社が不利になることに気づいたとしても遅いので、リスクを最小限に抑えるためにも顧問弁護士が必要です。
労使トラブルを起こしてしまう
会社は労務に関する整備を行っていかなければなりませんが、自社では手が回らず、結果として労使トラブルにつながってしまうことがあります。
例えば、現在の就業規則や雇用契約書には不備があるものの、それに気づかず運用を続けているケースは珍しくありません。
また、解雇や懲戒処分といったものを行うためには慎重に手続を踏むことが必要ですが、それを踏まずに進めてしまったために従業員との間で大きなトラブルに発展することもあります。
ハラスメントへの対応などについても同様です。
誤った対応をした場合は、被害者・加害者の双方から訴えられてしまうリスクもあります。
法令違反として処分を受けてしまう
企業活動には実に多くの法令が関係していますが、専門性が高いこともあり知らないうちに違反してしまうことも珍しくありません。
顧問弁護士がいれば適切なアドバイスを受けられますが、自社だけで対応する場合は、ついつい法令を見過ごしてしまい、法令違反として処分を受けてしまう可能性があります。
また、法改正が行われたのに、契約書の文言が旧法のままというケースも多く見られます。
例えば、民法の瑕疵担保責任は契約不適合責任へと変わりましたが、今でも瑕疵担保責任と書いている契約が見受けられます。
法律については「知らなかった」では済まされない事態に発展することもあるので、顧問弁護士がいない場合のリスクは極めて大きいと考えられます。
顧問弁護士の主な役割
顧問弁護士は、会社にとって重要な役割を持っている存在です。
具体的な役割を確認しておきましょう。
トラブル発生時の法的な対応
取引先との間や会社内で何かトラブルが発生してしまった場合、法的な視点から適切な対応のアドバイスを受けられます。
顧問契約を結んでおくことにより迅速な対応を依頼できるのが魅力です。
トラブルの内容によっては、内容証明郵便の送付や交渉の代行、さらには訴訟対応まで一貫して対応を任せられます。
これにより、会社側の負担を大きく軽減することが可能です。
法的に適切な対応をすることは、会社の損害が拡大してしまうのを抑えることにもつながります。
会社の体制や業務の整備・調査
会社において発生するトラブルの中には、そのトラブルが発生する何年も前から会社の体系・業務に問題があったケースも少なくありません。
長年にわたってリスクや問題が見落とされていることも考えられますが、そういったものの整備・調査も顧問弁護士に依頼可能です。
将来的に発生するトラブルを予防する効果も期待できます。
会社経営者からの相談への対応
会社の経営者は日々多くの判断を迫られており、判断する際には法的リスクについての検討が必要です。
自身では法的リスクを判断できない部分もありますが、顧問弁護士から法的観点からの助言が受けられます。
これは、会社経営者にとって安心して経営判断ができる環境を作るためにも重要です。
顧問弁護士は法律の専門家として会社経営者を支える役割を持ちます。
顧問弁護士の詳しい業務内容
顧問弁護士は企業をどのようにサポートしてくれるのか確認しておきましょう。
顧問弁護士が対応可能な主な業務内容は以下の通りです。
労務のサポート
会社として適正な労務環境を作るため、規則類の整備や運用の仕方についてアドバイスをもらうことができます。
労働トラブルが起きてしまった場合には、迅速な対応をしてもらうことにより、紛争の拡大を防ぐことができます。
最近では、人手不足、従業員の権利意識の高まりから、労務の重要性が上がってきており、顧問弁護士に日常からサポートしてもらうことが必要です。
契約書の作成やチェックのサポート
自社で用意する契約書の作成や、作成した契約書または受け取った契約書のチェックを依頼できます。
契約書に不備やリスクが含まれている場合は、内容を修正したり、取引先に交渉したりしなければなりません。
顧問弁護士がいれば法律の専門家としての視点で対応してもらえます。
売掛金の回収のサポート
顧客や取引先が代金を支払わない場合、顧問弁護士がいれば回収に関する助言を受けることが可能です。
代金が支払われないからといって、法的に問題のある方法での回収はできません。
顧問弁護士は適切な形で支払督促・内容証明郵便の作成や、債権回収交渉の代行などが可能です。
景品表示法のサポート
企業は自社の商品やサービスを魅力的にアピールしたいと考えますが、宣伝の仕方によっては景品表示法に触れてしまうことがあります。
ただ、どのような表現が不可とされているのか判断が難しい部分もあるでしょう。
顧問弁護士に相談すれば、判例等を検索し、適正の表現の仕方を考えてもらえます。
仮に消費者庁などから問題を指摘されてしまった場合は、顧問弁護士に相談し、対応方針の立案に協力してもらえます。
クレーム対応
取引先や消費者などからクレームがきた場合、適切に対応しなければなりません。
間違った対応で事態を悪化させないためにも、顧問弁護士に相談しましょう。
また、ネットへの悪質な書き込みなどがあった場合には、迅速な対応が求められます。
中には悪質なクレーマーもいますが、そのような人に対しては顧問弁護士に法的対応を任せることも可能です。
ハラスメントへの対応
社内でセクハラやパワハラ、マタハラなどのハラスメント被害が発生してしまった場合も、顧問弁護士に対応をお願いできます。
例えば、社内調査に関するサポートや、再発防止措置、加害者対応などです。
ハラスメントの問題は放置すると企業のイメージを悪化させてしまうため、迅速な対応が求められます。
顧問契約を結んでいれば優先して対応してもらえるため、スピード感を持って対応できるでしょう。
企業統治やガバナンスのサポート
不正や不祥事といったものを防ぐためには、ガバナンスが欠かせません。
ただ、具体的にどういった形で進めていけばよいかわからず、悩んでいる方もいるでしょう。
顧問弁護士は、企業統治やガバナンスのために必要な取締役会・株主総会の運営支援が可能です。
他にも、何か不祥事やトラブルが発生した際は適切に対応し、健全な会社運営を支えます。
顧問弁護士と契約する際の費用相場
顧問弁護士と契約する場合、月額5~10万円程度の顧問料が一般的です。
金額やサービス範囲は弁護士・法律事務所ごとに異なるため、契約前に内容をよく確認しましょう。
通常、顧問料は、日常の法律相談、契約書のチェック、簡易な契約書の作成までをカバーするもので、訴訟等紛争の解決には別途費用が発生します。
顧問弁護士と契約するメリット
問題が起こってから弁護士に相談するのではなく、顧問弁護士として契約しておくことによりどのようなメリットがあるのでしょうか。
代表的なメリットは以下の4つです。
メリット①気軽に相談できる
顧問契約を結んでおくことにより、何かわからないことや困ったことがあった際に気軽に相談できるのがメリットです。
最近では、インターネットで検索して自分で判断している方もいらっしゃいますが、中途半端な理解に基づいて判断すると間違える可能性がありますので、顧問弁護士に相談しておくのが安心です。
対面だけではなく、メールや電話、チャットなどでの相談に対応している弁護士と顧問契約を結んでおくと相談しやすくなります。
メリット②法的なトラブルを未然に防げる会社になる
顧問弁護士から法的なアドバイスが提供されるため、法的なトラブルを未然に防げるようになります。
例えば、契約書に不備があれば、問題が発生する前に修正をしてもらうことができます。
労務トラブルなどの潜在的リスクを発見し、トラブルに発展しないような対応を考えてもらうことができます。
法的なトラブルが発生してしまった場合にも、迅速かつ適切に対応してもらえます。
メリット③法律問題にスピーディに対応できる
顧問契約を結んでいる弁護士は、会社の内部事情や行っている業務、発生しやすいリスクなどについて日頃から理解しています。
そのため、何か問題が起こった際は細かい説明をしなくてもスピーディに対応可能です。
例えば、従業員が交通事故を起こしてしまったような場合、取引先から取引上のトラブルがあり、迅速に対応しないと法的措置を取ると内容証明郵便で警告された場合等です。
顧問契約を結んでいれば法律相談をする際に基本的に予約は必要なく、すぐに対応してもらうことが可能です。
一方で、新しく弁護士を探すと、自社の業務内容等を一から説明しなければならないことも多くタイムロスが発生してしまいます。
メリット④社員の個人的相談に応じてもらえる
自社で働いている社員が何か個人的な法的問題や疑問を抱えている際、会社の顧問弁護士に直接相談可能な状況を整えることも可能です。
社内の問題は同僚や上司に相談しにくい部分もあるため、第三者の専門家として弁護士に相談できる環境を作っておきましょう。
これは、働く上での不満や疑問を解消し、離職防止につながるポイントともいえます。
顧問弁護士の選び方
顧問弁護士を選ぶ際に、費用に注目する方が多いのではないでしょうか。
しかし、どんなビジネスでもそうですが、質の高い、経験の深い人は高く、質の低い、経験のない人は安いという状況は弁護士にも当てはまります。費用のみを重視せず、質を重視して、顧問弁護士を選ぶことをお勧めします。
関連記事:顧問弁護士の選び方と選択を誤らないため意識したい5つのポイント
ビジネスに詳しいか
弁護士の中には、法律の分野には詳しいが、ビジネスの実態がよくわからないという人がいます。
しかし、これでは、顧問弁護士として契約してから、何か相談する時に、まずはビジネスの実態を説明しなければならなくなります。
顧問弁護士を頼むのであれば、ビジネスの実態をよく知り、どんな問題でも的確に状況を把握してくれる弁護士に依頼するとよいでしょう。
実績があるか
顧問弁護士として、どれくらいの顧問先を持っているのか、どのようなサービスを提供しているのかをよく聞いておきましょう。
同じ業界での経験もよく聞いて置きましょう。
顧問弁護士としての実績があったとしても、同業界での経験が不足している場合は何かトラブルなどが発生した際に、的確な助言をもらえない可能性があるからです。
話を聞いてもらえるか
初回相談の段階で対応から信頼できる弁護士か判断しましょう。
例えば、相談内容に対する受け答えが曖昧でわかりにくい、専門用語ばかり使うような弁護士は避けておいた方が良いといえます。
また、こちらの話を途中で遮ったりして、話を最後まで聞いてくれない弁護士は、避けるべきでしょう。
よく話を聞いてくれる弁護士、わかりやすい言葉でしゃべる弁護士を選ぶことが大切です。
人柄に問題はないか
弁護士としての実力があったとしても、人柄に問題があるようでは困ります。
人柄に問題があって信頼できない弁護士では、相談しにくくなってしまいますので、結果として法的リスクを見落としたり、トラブル発生時の対応が遅れたりすることになりかねません。
話をよく聞いてくれる弁護士、話しやすい弁護士を選ぶのが、ポイントだと思います。
ホームページだけでは人柄は判断できないため、対面で相談して見極めることをおすすめします。
専門性がフィットしているか
企業法務を中心にしている弁護士の中には、会社法に詳しい人、知的財産権法に詳しい人、独占禁止法に詳しい人、英文契約に詳しい人等、それぞれの得意分野があります。
もし、顧問弁護士に依頼する業務が、特定の分野に限られているというのであれば、その分野を得意とする弁護士に依頼するべきでしょう。
顧問弁護士と契約する際に事前に確認するべき点
弁護士と顧問契約を結びさえすれば、それだけで安心できるとはいえません。
例えば、弁護士と顧問契約を結んだものの想定していたサービスが受けられなかった、途中解約ができなかった、予想外の顧問料がかかってしまったといったことも考えられます。
これらのトラブルを防ぐために、契約する際は以下の3点を確認しておきましょう。
プランの選択
弁護士事務所では、相談時間の目安で複数のプランが用意されています。
月額料金が安く設定されているプランは費用的にお得ではありますが、月稼働時間が短く、時間のかかる業務を依頼する際は追加料金が高くついてしまうこともあります。
会社が顧問弁護士に依頼するサービスの量を見積もり、どのプランが適しているのかを判断していきましょう。
契約期間
一般的に顧問弁護士の契約期間は1年間か2年間となっています。
中途解約ができるか、契約更新はできるか等は、弁護士・法律事務所によって異なるケースもあるので、よく確認しておきましょう。
顧問料
必ず明確に確認しておかなければならないのが、顧問料に関することです。
顧問料の月額費用相場は5~10万円程度です。
目安の利用時間によって、顧問料が変わるものと思いますので、自社のニーズをよく確認した上で、適正なプランを選択しましょう。
顧問弁護士でいつ起こるかわからない万が一に備えよう
顧問弁護士の概要や役割、費用相場について解説しました。
会社経営ではさまざまな法的問題が発生する可能性があるため、
信頼できる弁護士と顧問契約を結び、万が一に備えることをおすすめします。
東京の顧問弁護士なら青山東京法律事務所は、40社を超える顧問先を抱え、契約書のチェック、労務問題への対応、取引先とのトラブルについての相談等を行っています。
業種的には、建設業、製造業、サービス業等きわめて多岐にわたっており、ほぼあらゆる業種をカバーしています。
また、当事務所には、外資系勤務経験を有するものも多く、英文契約についても対応可能です。
顧問弁護士をお探しの方は、是非青山東京法律事務所へお問い合わせください。
監修者

植田 統 弁護士(第一東京弁護士会)
東京大学法学部卒業、ダートマス大学MBA、成蹊大学法務博士
東京銀行(現三菱UFJ銀行)で融資業務を担当。米国の経営コンサルティング会社のブーズ・アレン・アンド・ハミルトンで経営戦略コンサルタント。
野村アセットマネジメントでは総合企画室にて、投資信託協会で専門委員会委員長を歴任。その後、レクシスネクシス・ジャパン株式会社の日本支社長。
米国の事業再生コンサルティング会社であるアリックスパートナーズでは、ライブドア、JAL等の再生案件を担当。
2010年弁護士登録。南青山M's法律会計事務所を経て、2014年に青山東京法律事務所を開設。2018年、税理士登録。
現在、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論の講義を行う他、Jトラスト株式会社(東証スタンダード市場)等数社の監査役も務める。