株式・株主総会(Ⅴ)-株主権確認請求

株主権とは、企業の株式を取得した株主に対して与えられる権利のことです。財産的な利益に関する権利(自益権)として、剰余金分配請求権や残余財産分配請求権、株式買取請求権などがあり、株主全体の利害に関する権利(共益権)として、株主総会における議決権や株主総会決議取消訴権、会社組織に関する行為の無効訴権、取締役の違法行為の差止請求権といった権利があります。

 

共益権は、株主総会への出席権や株主代表訴訟提起権など1株(1単元株)の株主でも行使できる単独株主権と、会計帳簿閲覧請求権や株主総会招集請求権というような一定割合以上の株式数を持つ株主でなければ行使できない少数株主権に分けられます。

 

この共益権の帰属が問題となって、支配権争い、株主権帰属の問題が発生してきます。

 

1 支配権争い、株主権帰属の問題が生じる原因

代表的なものとして、次の3つがあります。

 

① 相続対策のために子どもを名義株主にしたケース

親が会社を設立し、経営がうまく行き始めたとき、将来の相続のことを考えて、早めに子どもへ株式の名義を代えてしまうことは、よく見受けられます。会社の経営がうまく行き、利益を積み上げ始めているときに、何年も後になってしまうと、株価評価が高騰してしまうので、今のうちに株式の名義を子どもに代えておけば、仮に親である自分が死亡しても、相続税はかからずに済むだろうと考えるわけです。

親から子どもへ株式を贈与したことにして、株主の名義を親から子どもへ書き換えて、それで済ませてしまいます。毎年の定時株主総会では、親が代表取締役として株主総会を開催し、名義株主の子どもが賛成票を投じたものとして、株主総会議事録を書面で作成し、取締役の登記などもそれに基づいてやってしまいます。

こうしたやり方は、親子関係がいい限り、問題となることはありませんが、親子が仲たがいし、会社支配権をめぐって戦う状況になると、どちらが真の株主かという争いに発展します。

 

 

② 会社設立などのために名義株主が存在する場合

1990年の改正前商法においては、株式会社の設立には7名以上の発起人の確保が求められていたため、現実に株式を引き受けた者以外の友人、知人などから名前を借りて、発起人として名をつらねるケースが多く見られました。

ところが、時間の経過とともに、あるいは、相続が起きて子どもの代になると、名義株主であったはずの株主が本当の株主であったと思い違いし、株主間での争いに発展するケースが起こってきました。

 

 

③ 誰に株式が帰属しているのか不明である場合

社歴が長く、株主名簿が未整備な会社では、設立時より株式が何度も譲渡され、株主が不明になっているケースも見受けられます。

 

中小企業では、経営状態が悪く、実質的に株式が無価値である場合も多く、株式譲渡契約書を作成せず、資金のやり取りもなく、株式の名義を書き換えてしまうことが行われています。その結果、今の株主が誰かがわからなくなってしまいます。本来、株主でなくなったはずの者が株主だと主張して、株式の買取を迫ってきたり、自分の取締役にせよと言って、経営に介入しようとしてきたりすることで、株主間の紛争に発展するのです。

 

 

2 株主確認請求訴訟の実際

こうした株主権の紛争を解決するためには、まずは株主間で話し合うことが必要でしょう。中小企業であれば、株主は家族である場合も多く、相互に過去の株式譲渡の経緯等について説明していけば問題が解決することも少なくありません。

しかし、それでもどうしても解決できないという場合に、株主権確認請求訴訟を提起することになります。

 

① 原告と被告

自らに株主権があると主張する者が原告として訴訟を提起することになりますが、被告となるのは、原告への株主権帰属を否定している会社であったり、その株式は自らのものだと主張する別の株主であったりします。

訴訟の代表的なケースとしては、少数株主が、会社とほぼすべての株式を所有している代表取締役を相手に訴えを起こす場合です。

 

 

② 株主権帰属の立証方法

このような場合、原告は少数株主で会社の有する書類や記録へのアクセスがないので、自己が株主であることを立証するのに苦労することになります。以下のような証拠を見つけることができれば、訴訟を有利に展開できるようになります。

 

ア 株式譲渡契約書

これは自らが株式の譲渡を受けたことを証明するものですのできわめて重要な証拠となります。

 

イ 株式譲渡承認請求書・承認書

ほぼすべての中小企業では、株式に譲渡制限がついており、株主総会若しくは取締役会に譲渡承認請求を行う必要があります。したがって、株式譲渡承認請求書と承認書がそろっていれば、これも重要な証拠となります。

 

ウ 株券の存在

平成18年の会社法改正によって株券不発行が原則となりましたので、現在残っている株券発行会社は極めて少数です。その少数の株券発行会社においては、株券の譲渡が株式譲渡の成立要件となっているので、株券を持っている場合には、株主であることの有力な証拠となります。

 

エ 株主名簿

株主名簿に自己の名前が記載されていることは、会社が自己を株主として認めていることを示すものですので、これも有力な証拠となります。

 

オ 出資金を振り込んだ際の預金通帳記帳・銀行記録

自己の株が名義株であると争われている場合には、出資金を振り込んだ記録があれば、 名義株でないことの有力な証拠となります。

 

カ 送付されてきた株主総会招集通知

これも会社が自己を株主として取り扱ってきたことの有力な証拠となります。

 

 

3 株主権確認が必要となる原因

当事務所では、株主権帰属の問題を何度も扱っています。多くのケースでは、親族間の譲渡であるため、会社法に従って適正な手続きが踏まれていないことが争いの起こる原因になっています。

争いになる典型的なケースは、親子間で子が小さい時、若い時に株式を贈与されているが、後に親子関係が悪化して子が追い出されるという場合です。

子が小さい時、若い時は、親子仲もよく、親は将来子に会社を継がせるつもりでいます。顧問税理士は、株価がまだ安く、今譲渡しても贈与税を支払わなくてよいという理由で、親から子への譲渡を勧めます。こうした場合、株価が上がってしまうことを避けるために、決算直前に譲渡が行われる場合が多いのです。顧問税理士は急いでいるので、株式譲渡契約書は作成されず、株式譲渡承認決議も行われず、贈与ですから資金の授受も行われません。顧問税理士が主導してやっていますから、税務申告書の別表2の株主名だけが書き換えられます。

こうした状態ですので、子が追い出されることになった時点で、株式を買い取ってもらおうと思っても、別表2以外には、株主であることを証明する証拠がありません。

株券発行会社で同じような親子間の争いを行ったこともありますが、その場合には株券がそもそも発行されていなかったため、株式譲渡の成立を裁判所に認めてもらうことができませんでした。

こうした事態を避けるためには、株主は、自分が株式の譲渡を受けたときの手続が会社法に従ってちゃんと行われているか、自己の名が株主名簿にちゃんと記載されているかを確認しておいた方がいいでしょう。