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監修者:植田 統 弁護士(第一東京弁護士会)
青山東京法律事務所 代表
東大法学部卒、ダートマス大学MBA。東京銀行、ブーズ・アレン、アリックスパートナーズ等で経営戦略や企業再生の要職を歴任。現在は青山東京法律事務所代表として、約40社の顧問弁護士を務める。豊富なビジネス経験を武器に、高度な企業法務や事業承継を完遂する実務派弁護士。

遺産相続では、「誰が相続人になるのか」「どのような割合で遺産を分けるのか」と疑問に感じる方もいらっしゃるでしょう。遺産の分配には法律で定められた目安がありますが、相続人全員の合意があれば、任意の割合で遺産を分けることも可能です。

本記事では、遺産の分配に関する基本知識を説明したのち、具体的な分配方法の決め方や遺産を分ける際の注意点について解説します。

遺産の分配に関して知っておくべき基本知識

遺産の分配方法を理解するためには、「法定相続人」「法定相続分」「遺留分」の3つの用語を知っておく必要があります。まずは、それぞれの意味を確認しましょう。

[A3.1]法定相続人とは

法定相続人とは、遺産を相続する権利が法律によって認められた人のことです。
亡くなった人(被相続人)の配偶者は必ず法定相続人となり、それ以外の法定相続人は以下の順位に従って決まります。

【配偶者以外の法定相続人の順位】

区分 被相続人との関係
第一順位 子※1
第二順位 父母※2
第三順位 兄弟姉妹

※1すでに亡くなっている場合は、孫が代わりに相続人となる「代襲相続」が認められている
※2すでに亡くなっている場合は、祖父母が代わりに相続人となる
上位順位の相続人がいる場合、下位順位の人は法定相続人になりません。たとえば、被相続人に子がいるのであれば、父母や兄弟姉妹は相続人になれません。父母が相続人となるのは子がいない場合であり、兄弟姉妹が相続人となるのは子も父母もいない場合です。

参照元:e-Gov法令検索「民法第八百八十七条」
e-Gov法令検索「民法第八百八十九条」
e-Gov法令検索「民法第八百九十条」

法定相続分とは

法定相続分とは、法定相続人が相続できる遺産の割合のことです。法律では、以下のように定められています。

【相続人ごとの法定相続分】

相続人 法定相続分
配偶者+子 配偶者:2分の1

子:2分の1

配偶者+父母 配偶者:3分の2

父母:3分の1

配偶者+兄弟姉妹 配偶者:4分の3

兄弟姉妹:4分の1

同じ順位の相続人が複数いる場合は、その相続分を均等に分けます。たとえば、子が2人いる場合は、子の法定相続分である2分の1を2人で分けるため、それぞれ4分の1ずつ相続するという仕組みです。
また、配偶者がいないケースでは、もっとも優先順位の高い法定相続人がすべての遺産を相続することになります。

ただし、法定相続分は必ずしも守るべきものではありません。相続人全員が合意すれば、異なる割合で遺産を分けることも可能です。詳しくはこのあと、「遺産相続時の分配方法の決め方」の項で解説します。

参照元:e-Gov法令検索「民法第九百条」

遺留分とは

遺留分は、兄弟姉妹以外の法定相続人に保障された、最低限の遺産の取り分です。被相続人は遺言書によって遺産の承継先を自由に指定できますが、遺留分を侵害することはできません。

遺留分の総額は、以下のように定められています。

【遺留分の総額】

条件 遺留分の総額
相続人に配偶者または子がいる場合 遺産全体の2分の1
相続人が父母のみの場合 遺産全体の3分の1

各相続人の遺留分は、法定相続分をもとに計算します。

万が一、遺言書によって遺留分が侵害された場合は、「遺留分侵害額請求」を行うことで、遺留分侵害額に相当する金銭を請求できます。

参照元:e-Gov法令検索「民法第千四十二条」

遺産相続時の分配方法の決め方

ここからは、実際にどのような流れで遺産の分配方法を決めるのかを確認していきましょう。

【遺産相続の分配方法の決め方】

  • 遺言書に従う
  • 遺産分割協議で決める
  • 法定相続分に従う
  • 裁判所の手続きを利用する

遺言書に従う

被相続人が遺言書を残している場合は、原則としてその内容に従って遺産を分配します。遺言書には法的効力があるため、相続手続きを進める際は内容を十分に確認しましょう。

ただし、遺言書があるからといって、必ずその内容通りに分配しなければならないわけではありません。相続人全員が合意している場合は、次に紹介する方法で遺産を分配することも可能です。

遺産分割協議で決める

遺言書がない場合や、遺言書とは異なる分配方法を希望する場合は、遺産分割協議を行います。遺産分割協議とは、相続人全員で遺産の分け方を話し合う手続きのことです。

遺産分割協議を成立させるには、相続人全員の合意が不可欠です。全員が合意していれば、法定相続分とは異なる割合で遺産を分配することができます。

法定相続分に従う

遺産分割協議で意見がまとまらない場合は、法定相続分を基準に分配方法を検討します。法定相続分は民法で定められた相続割合であり、公平な遺産分配を行うための目安です。

実際の遺産分割協議でも、法定相続分をもとに割合を調整するケースが多くみられます。

裁判所の手続きを利用する

相続人同士の話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の手続きを利用します。まずは遺産分割調停を申し立て、裁判官や調停委員を交えて話し合いによる解決を目指しましょう。

調停でも合意に至らない場合は、遺産分割審判へ移行し、裁判所が法律に基づいて遺産の分配方法を判断します。

不動産を含む遺産の分割方法

土地や建物などの不動産は、現金のように容易に分けられません。そのため、遺産の種類に応じて適切な分割方法を選ぶ必要があります。
ここでは、遺産分割で用いられる4つの方法を解説します。

【不動産を含む遺産の分割方法】

  • 現物分割
  • 換価分割
  • 代償分割
  • 共有分割

現物分割

現物分割とは、不動産を売却せず、そのままのかたちで分配する方法です。
たとえば、複数の土地があるなら子Aには土地Aを、子Bには土地Bを分配します。
手続きが比較的シンプルで、先祖代々の土地や建物を手放さずに済む点がメリットです。

ただし、不動産ごとの価値に差がある場合は、公平な分配が難しくなることがあります。

換価分割

換価分割では、不動産を売却して現金化し、その売却代金を相続人で分配します。
現金にして分けるため、遺産を公平に分配しやすく、相続人同士のトラブル防止につながるというメリットがあります。

一方、不動産を手放さなければならず、さらに売却費用や税金が発生する可能性がある点に注意が必要です。

代償分割

代償分割では、特定の相続人が不動産を取得し、その代わりにほかの相続人へ代償金を支払います。

遺産として5,000万円の土地と3,000万円の建物があり、相続人として子どもが2人いる場合を例に考えてみましょう。
この場合、5,000万円の土地を子Aが相続し、3,000万円の建物を子Bが相続します。
そのうえで、子Aが1,000万円の代償金を子Bに支払うと、両者の相続額は以下のように算出できます。

子Aの相続額:土地5,000万円-代償金1,000万円=4,000万円

子Bの相続額:建物3,000万円+代償金1,000万円=4,000万円

結果、両者の相続額が均等になるわけです。

こうした代償分割には、現物分割と同じく不動産を残せるだけでなく、相続人間で遺産を公平に分けやすいというメリットがあります。

ただし、不動産を取得する相続人には代償金を支払うための資金が必要となるほか、不動産の評価額をめぐって相続人同士で意見が分かれることもあるでしょう。

共有分割

共有分割とは、複数の相続人が不動産を共有名義で所有する方法です。
ほかの方法のように、不動産を売却したり代償金を準備したりする必要がありません。

一方、共有者間で意見が対立すると、不動産の管理や売却などがスムーズに進まなくなるため、将来的にトラブルへ発展するリスクがあります。

遺産を分配する際の注意点

分割した遺産を分配する際には、トラブルを防いで円滑に進めるためにも、以下の3つの注意点を押さえておきましょう。

【遺産を分配する際の注意点】

  • 負債も遺産に含まれる
  • 法定相続人が未成年者の場合は代理人の選任が必要となる
  • 相続放棄をした方がいる場合は遺産の相続割合が変わる

負債も遺産に含まれる

遺産には、不動産や預貯金などのプラスの財産だけでなく、借金や未払いの税金といった負債も含まれます。

そのため、遺産の内容を十分に確認せずに相続すると、予想外の債務を負担することになる可能性があります。負債がプラスの財産を上回る場合は、遺産を一切引き継がない「相続放棄」や、プラスの範囲内で借金を引き継ぐ「限定承認」を検討することも重要です。

なお、相続放棄や限定承認の手続きは、自身が相続人になったことを知った日から3か月以内に行う必要があります。

参照元:裁判所「相続の放棄の申述」
裁判所「相続の限定承認の申述」

法定相続人が未成年者の場合は代理人の選任が必要となる

相続人のなかに未成年者がいる場合、相続に関する法律上の手続きを単独で行うことができないため、代理人が必要になります。

通常、親が法定代理人となりますが、親自身も相続人である場合は利益相反にあたるため、代理人になることができません。その場合は、家庭裁判所に申し立てを行い、祖父母や叔父叔母などから特別代理人を選任する必要があります。

相続放棄をする人がいる場合は遺産の相続割合が変わる

相続放棄をする人がいる場合、残りの相続人の相続割合が変わります。
たとえば、配偶者と3人の子が相続人の場合、子のうち1人が相続放棄をすると、子ども1人あたりの法定相続分は6分の1から4分の1に増えます。

遺産分割協議を進める際は、相続放棄をする人がいないかどうかを先に確認し、相続人全員で情報を共有しておくことが大切です。

遺産相続時の分配に関する疑問

ここでは、遺産相続時の分配に関するよくある疑問にお答えします。

【遺産相続時の分配に関する疑問】

  • Q1.遺産の分配に期限はありますか?
  • Q2.遺産を受け取った際に税金はかかりますか?
  • Q3.相続人以外に遺産を渡す方法はありますか?

Q1.遺産の分配に期限はありますか?

遺産の分配自体に法律上の期限はありません。
しかし、相続税の申告や不動産の相続登記など、期限が定められている手続きもあるため、できるだけ早く進めることが大切です。

Q2.遺産を受け取った際に税金はかかりますか?

遺産を受け取った際に相続税がかかるかどうかは、被相続人の遺産の総額によって決まります。遺産の総額が基礎控除額を超える場合は、相続税の申告・納付が必要です。

Q3.相続人以外に遺産を渡す方法はありますか?

相続人以外の人に遺産を渡したい場合は、遺言書による遺贈や生前贈与を行う方法があります。また、生命保険金の受取人に指定する方法も有効です。生命保険金は原則として遺産分割の対象にならないため、相続人以外の人へ財産を残す手段として活用できます。

遺産の分配方法は、遺産や相続人の状況に応じて決めることが重要

遺産相続では、まず誰が相続人になるのかを確認することが大切です。遺言書がある場合は原則としてその内容に従い、遺言書がない場合は相続人全員で遺産分割協議を行って分配方法を決めます。

遺産の分け方には現物分割・換価分割・代償分割・共有分割があり、遺産の種類に応じて適切な方法を選ぶこととなります。また、負債の有無や相続放棄をする人の存在などによっても分配内容が変わるため、遺産や相続人の状況を事前に確認しておきましょう。

遺産相続に関して何かお困りごとがあれば、青山東京法律事務所へご相談ください。当事務所には相続問題に精通した弁護士が在籍しており、遺産分割協議や相続人間のトラブルなど、さまざまな案件に対応しています。初回相談は無料ですので、ぜひお気軽にご相談ください。

監修者

植田統

植田 統   弁護士(第一東京弁護士会)

東京大学法学部卒業、ダートマス大学MBA、成蹊大学法務博士

東京銀行(現三菱UFJ銀行)で融資業務を担当。米国の経営コンサルティング会社のブーズ・アレン・アンド・ハミルトンで経営戦略コンサルタント。 野村アセットマネジメントでは総合企画室にて、投資信託協会で専門委員会委員長を歴任。その後、レクシスネクシス・ジャパン株式会社の日本支社長。 米国の事業再生コンサルティング会社であるアリックスパートナーズでは、ライブドア、JAL等の再生案件を担当。

2010年弁護士登録。南青山M's法律会計事務所を経て、2014年に青山東京法律事務所を開設。2018年、税理士登録。

現在、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論の講義を行う他、Jトラスト株式会社(東証スタンダード市場)等数社の監査役も務める。

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