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株式・株主総会(Ⅲ)-代表取締役の解職・解任

多くの会社では、代表取締役が取締役会の議長を務め、取締役会に係る議題をコントロールし、取締役会で決議を得られると、その実施は代表取締役の指示の下、担当取締役が担っていくことになります。したがって、代表取締役が会社経営において果たす役割は巨大です。したがって、会社の経営を軌道修正しようとするときには、代表取締役を代えることが必要になってきます。

 

1. 代表取締役の解職・解任

代表取締役の解職とは、代表取締役から代表権のみを失わせ、平取締役とすることです。この場合、代表取締役は引き続き取締役としての権限を有し、取締役会に出席することもできます。

 

これに対して、代表取締役の解任とは代表取締役の取締役としての地位を失わせることです。この場合、代表取締役は取締役ではなくなり、会社との委任関係は終了します。同時に代表権もなくなります。

 

 

2. 解職の手続

代表取締役を解職するのは、取締役会の決議によって行うことができます。代表取締役の解職に関する決議事項は、取締役会で通常行われている他の決議事項と同様、出席した取締役の過半数をもって決議します。

 

代表取締役を解職する決議において、審議の対象となっている代表取締役は当該決議について特別の利害関係を有すると解されており、議決権を有しません。また、決議の員数としてもカウントされません。

 

代表取締役解職の議題は、あらかじめ取締役会の議題としておく必要はなく、現場で上程することもできます。代表取締役の解職が議題として緊急上程されれば、審議の対象となっている代表取締役は求めがあれば会議室から退席しなければならず、決議において議長を務めることもできません。

 

取締役会で代表取締役の解職の決議がなされた場合、ただちにその効力が生じます。対象となる代表取締役への通知は解職の効力発生要件ではありませんが、以後は代表取締役として振る舞うことのないよう、本人に通知しておくべきでしょう。

 

取締役会設置会社の場合、代表取締役は必ず選定しなければならないので、代表取締役の解職を決議した取締役会において新たな代表取締役を選定することになります。

 

代表取締役が誰であるかということは会社の登記事項とされていますので、代表取締役を解職し、新たな代表取締役を選定した場合には変更登記を行う必要があります。

 

 

3. 解任の手続き

代表取締役の解任は基本的に取締役の解任と同様ですので、「取締役解任」の記事を参照してください。

 

 

4. 代表取締役が会社の株式の過半数を保有している場合

代表取締役がオーナーであり、会社の株式の過半数を保有している場合、代表取締役を解職・解任しても、その代表取締役はすぐに復活することができます。過半数を保有する株主は単独で株主総会決議を可決することができるので、株主総会決議を通じて意に沿わない取締役を解任し、新たな取締役を選任することが可能だからです。

 

ただし、取締役の解任には、株主総会の招集が必要であり、招集は代表取締役が行うので、新たに指名された代表取締役が招集を行わない限り、株主総会での決議が行えません。そこで、解職・解任された代表取締役は、裁判所へ株主総会招集許可を申し立て、その認可を得て、初めて株主総会を招集できるようになるので、3,4か月の時間は必要となります。この時間の間に、現代表取締役が解職・解任された代表取締役から株式を買い取るなり、協議を行って和解できるかが焦点となってきます。

監修者

植田統

植田 統

1981年、東京大学法学部卒業後、東京銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。
ダートマス大学MBAコース留学後、ブーズ・アレン・アンド・ハミルトンで経営戦略コンサルティングを担当。
野村アセットマネジメントで資産運用業務を経験し、投資信託協会で専門委員会委員長を歴任。
レクシスネクシス・ジャパン株式会社の社長を務め、経営計画立案・実行、人材マネジメント、取引先開拓を行う。
アリックスパートナーズでライブドア、JAL等の再生案件、一部上場企業の粉飾決算事件等を担当。
2010年弁護士登録後、南青山M's法律会計事務所に参画。2014年に青山東京法律事務所を開設。2018年、税理士登録。
現在、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論を講義。数社の社外取締役、監査役も務める。

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