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遺産相続は、突然直面することが多く、何から手を付ければよいか戸惑う方がほとんどです。
特に「遺言書が見つかった場合、どのような手続きが必要なのか」「遺言書の内容はどこまで効力があるのか」といった疑問を持つ方も多いでしょう。

本記事では、遺言書がある場合の遺産相続手続きや、遺言書の種類、法的効力、注意点について、実際の具体例を交えて詳しく解説します。

遺産相続における遺言書の法的効力

遺言書は、被相続人(亡くなった方)の最終意思を反映する重要な書類です。
民法では、遺言によって遺産を処分できると定められており、原則として遺言書の内容が優先されます。

相続割合を指定できる

例えば、法定相続分では長男と次男がそれぞれ1/2ずつ相続するケースでも、「長男に全財産を相続させる」と遺言書に記載すれば、その内容が優先されます。

具体例:
父が亡くなり、長男と次男が相続人の場合、遺言書に「全財産を長男に相続させる」と明記されていれば、原則として長男が全ての財産を取得します。
ただし、後述する「遺留分」の問題が発生する場合もあります。

関連記事:遺産の相続割合はどのように決まる?法定相続分を徹底解説

遺産分割方法を指定できる

現金は長女、不動産は長男、株式は次男といったように、具体的な分割方法を指定することも可能です。
これにより、相続人間のトラブルを未然に防ぐことができます。

具体例:
「自宅の土地建物は長女に、預貯金は次男に、株式は三男に相続させる」と遺言書に記載すれば、その通りに分割されます。

関連記事:土地を遺産として相続する手続きや土地の分け方を徹底解説

法定相続人以外の人にも遺産を残せる

例えば、長年介護してくれた親族以外の方や、特定の団体に財産を遺贈することもできます。
これを「遺贈」といい、相続させる相手に特に制限はありません。

具体例:
「生前お世話になった友人Aに100万円を遺贈する」「地域のNPO法人に500万円を寄付する」といった内容も有効です。

負担付き遺贈

「自宅を長男に遺贈するが、母の介護を続けることを条件とする」といった、条件付きの遺贈も可能です。

遺産を寄付できる

遺言書を使って、NPO法人や学校、病院などに財産を寄付することも可能です。
これを「遺贈寄付」と呼び、相続税の節税効果も期待できます。

具体例:
「遺産の一部を日本赤十字社に寄付する」と遺言書に記載すれば、その分の相続税が軽減される場合があります。

遺産相続に関する遺言書の種類

遺言書には主に3つの種類があります。それぞれの特徴を理解し、状況に応じて最適な方法を選びましょう。

自筆証書遺言

被相続人が自分で全文、日付、氏名を手書きし、押印する遺言書です。
費用がかからず手軽ですが、形式不備による無効リスクや、紛失・改ざんの危険性があります。

具体例:
父が自宅でノートに「全財産を長女に相続させる」と手書きし、署名・押印したものが自筆証書遺言です。

公正証書遺言

公証人役場で公証人が作成する遺言書です。専門家が関与するため、形式不備の心配がなく、原本が公証役場に保管されるため紛失リスクもありません。
費用はかかりますが、最も安全性が高い方法です。

具体例:
高齢の母が弁護士に相談し、公証人役場で「長男に自宅を、次男に預金を相続させる」と公正証書遺言を作成したケース。

秘密証書遺言

内容を秘密にしたまま、公証人に遺言書の存在のみを証明してもらう方法です。
自筆証書遺言と公正証書遺言の中間的な位置づけですが、実務上はあまり利用されていません。

具体例:
自分でパソコンで作成し封印した遺言書を公証人役場に持参し、存在のみ証明してもらう方法です。

遺言書が存在する場合の遺産相続手続き

遺言書が見つかった場合、相続人は以下の手順で手続きを進めます。

遺言書の存在を相続人全員で共有する

遺言書を発見した場合、必ず相続人全員にその存在を知らせましょう。
遺言書を隠したり、勝手に開封した場合、相続権を失う可能性があります。

具体例:
長男が父の遺言書を発見したが、他の兄弟に知らせずに開封したため、相続権を失った判例もあります。

遺言書の検認を行う

自筆証書遺言や秘密証書遺言は、家庭裁判所で「検認」という手続きが必要です。
検認前に開封すると罰則が科されることもあるため、注意が必要です。

具体例:
自筆証書遺言を発見した次女が、家庭裁判所に検認申立てを行い、正式に開封したケース。

遺言執行者が存在するか確認する

遺言執行者が指定されている場合、その人が遺産分割や名義変更などの手続きを行います。
自分が遺言執行者に指名されたが手続きが分からない場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

具体例:
遺言書に「遺言執行者として長男を指定する」と記載されていた場合、長男が不動産の名義変更や預金の解約手続きを行います。

遺言書によらず別の方法で遺産を分割できるケース

遺言書があっても、相続人・受遺者全員が合意すれば、遺言書と異なる方法で遺産を分割することが可能です。
また、遺言書が法律上の形式要件を満たしていない場合は、原則として無効となります。

具体例:
遺言書に「全財産を長男に相続させる」とあっても、他の兄弟全員が「平等に分けたい」と合意すれば、その通りに分割できます。

遺言書の内容が不公平な場合は?

遺言書の内容が極端に一部の相続人に有利である場合、「遺留分侵害額請求」を行うことができます。
遺留分とは、法律で保証された最低限の相続分です。例えば、長男に全財産を相続させる遺言があっても、他の相続人は遺留分を請求できます。

具体例:
父の遺言書に「全財産を長男に相続させる」と記載されていたが、次男と長女が遺留分侵害額請求を行い、一定額を取得したケース。

遺留分侵害額請求の流れ

遺留分侵害額請求は、まず協議で解決を目指し、それでも解決しない場合は家庭裁判所で調停、最終的には訴訟となります。

具体例:
協議で折り合いがつかず、家庭裁判所で調停を行い、最終的に訴訟で遺留分が認められた事例もあります。

遺留分侵害額請求権には時効がある

遺留分侵害額請求権には時効があり、原則として相続開始および遺留分侵害を知った時から1年以内に行使しなければなりません。

具体例:
遺言書の存在を知ってから1年以上経過してしまい、遺留分請求が認められなかったケースもあります。

まとめ

遺言書がある場合の遺産相続手続きは、遺言書の種類や内容、相続人の合意状況によって大きく異なります。遺言書の内容に納得できない場合や、手続きに不安がある場合は、早めに弁護士に相談することがトラブル防止の第一歩です。

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監修者

植田統

植田 統   弁護士(第一東京弁護士会)

東京大学法学部卒業、ダートマス大学MBA、成蹊大学法務博士

東京銀行(現三菱UFJ銀行)で融資業務を担当。米国の経営コンサルティング会社のブーズ・アレン・アンド・ハミルトンで経営戦略コンサルタント。 野村アセットマネジメントでは総合企画室にて、投資信託協会で専門委員会委員長を歴任。その後、レクシスネクシス・ジャパン株式会社の日本支社長。 米国の事業再生コンサルティング会社であるアリックスパートナーズでは、ライブドア、JAL等の再生案件を担当。

2010年弁護士登録。南青山M's法律会計事務所を経て、2014年に青山東京法律事務所を開設。2018年、税理士登録。

現在、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論の講義を行う他、Jトラスト株式会社(東証スタンダード市場)等数社の監査役も務める。

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