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「残業代が出ないときはどこに相談すればよいの?」などの疑問を抱いていませんか。
適切な相談先がわからず、困っている方もいます。
このようなケースでは、弁護士や労働基準監督署などに相談できます。
ただし、具体的な対応は相談先で異なるため、詳細を把握しておく必要があります。
本記事では、6つの相談先を紹介するとともに、相談時に注意したいポイント、弁護士に相談するメリットなどを解説しています。
残業代に関してお困りの方は参考にしてください。
目次
残業代が出ないケース
残業代が支払われない代表的なケースは次のとおりです。
【代表的なケース】
- 会社が残業代の支払いを認めていない
- タイムカードが定時で切られている
- 自宅での残業を強いられている
ここでは、これらのケースについて解説します。
会社が残業代の支払いを認めていない
会社の中には、何かしらの理由をつけて残業代の支払いを認めていないところがあります。
たとえば、以下の理由などが考えられます。
【理由】
- 会社の慣例
- 社長の方針
もっともらしい理由があったとしても、残業代を支払わない対応は適法とはいえません。
労働基準法第37条で、時間外労働をさせた場合は割増賃金を支払わなければならないと定められているためです。
ここでいう時間外労働とは、法定労働時間を超えた労働を指します。
法定労働時間は、労働基準法第32条で以下のように定められています。
【法定労働時間】
- 休憩時間を除き1日あたり8時間
- 休憩時間を除き1週間あたり40時間
会社が定める所定労働時間が、法定労働時間より短いこともあります。
残業時間が法定労働時間内に収まる場合は、働いた時間分の通常賃金を支払わなければなりません。
会社が定める所定労働時間が、法定労働時間より短いこともあります。
残業時間が法定労働時間内に収まる場合、割増賃金ではなく、働いた時間分の通常賃金を支払わなければなりません。
出典:e-GOV法令検索「労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)」
タイムカードが定時で切られている
会社の中には、定時にタイムカードを切らせてから残業をさせているところもあります。
たとえば、上司の指示で18時にタイムカードを切らせて、20時まで残業をさせるなどが考えられます。
タイムカードをもとに労働時間を算出するため、上記のケースであれば2時間分の残業代は支払われないでしょう。
ただし実際に残業が発生している場合は、労働基準法第37条に違反する可能性があります。
残業時間を示す証拠があれば、残業代を請求できる可能性は高いといえます。
自宅での残業を強いられている
勤務時間内に終わらなかった仕事を、自宅に持ち帰らせて行わせる会社もあります。
具体例は次の通りです。
【具体例】
- 上司が自宅での残業を指示する
- 上司が自宅での残業を認めている
- 自宅で残業しなければ所定の期限内に業務を終えられない
これらのケースも残業代を受け取れる可能性があります。
ただし、すべての持ち帰り残業で、残業代が発生するわけではありません。
また、立証が難しい点にも注意が必要です。
残業代が出ない場合の相談先
残業代が出ない場合は、次の機関で相談するとよいでしょう。
労働基準監督署
労働基準監督署は、労働基準関係法令の違反などについて相談を受け付けている厚生労働省の第一線機関です。
残業代の不払いが疑われる場合は、労働基準監督署に相談できます。
従業員からの情報提供をきっかけとして、立入調査を行い、事業主に対して是正を指導することがあります。
令和6年に労働基準監督署が実施した監督指導の結果は以下の通りです。
| 分類 | 件数 |
|---|---|
| 賃金不払い事案の件数 | 22,354件 |
| 指導により賃金が支払われた件数 | 21,495件 |
出典:厚生労働省「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和6年)」
ただし、すべてのケースで積極的に対応してくれるわけではありません。
依頼者の代理人として行動してくれる弁護士に相談するほうがよいこともあります。
弁護士
法律の専門家である弁護士に、残業代の不払いについて相談することもできます。
主なメリットは以下の通りです。
【メリット】
- 解決に向けたアドバイスを受けられる
- 不払いになっている残業代を計算してくれる
- 依頼者に代わって会社と交渉してくれる
- 労働審判や民事裁判に対応してくれる
たとえば、証拠の収集についてアドバイスを受けられるなどが考えられます。
初回相談を無料にしている法律事務所が多い点も特徴といえます。
弁護士に依頼するメリットは後の章で説明します。
総合労働相談センターコーナー
職場で起きたあらゆる労働問題に関する相談を受け付け、解決につながる情報をワンストップで提供している厚生労働省の機関です。
残業代の不払い、労働条件の引き下げ、職場内のいじめ・嫌がらせなど、幅広い労働問題に対応しています。
また、都道府県労働局長が問題解決の方向性を示し当事者間の自主的な解決を促す「助言・指導」、紛争調整委員会のあっせん委員が当事者間の話し合いを促進するあっせん制度の案内も行っています。
総合労働相談センターコーナーは、全国の労働基準監督署や労働局内に設けられています。
労働組合
労働組合は、労働条件の維持改善などを主な目的として、労働者が主体となり組織する団体です。
労働組合に、残業代の不払いを相談することもできます。
主なメリットは、団体交渉権を活かして組織で交渉を進められることです。
1人で交渉するよりも、話し合いを有利に進められる可能性があります。
ただし、労働組合に加入すると組合費がかかります。
また、不当な扱いは認められませんが、会社から敵視される恐れがあるため、注意が必要です。
会社に労働組合がない場合は、所属先に関係なく個人単位で加入できる合同労働組合で相談するとよいでしょう。
全労連・無料労働相談ホットライン
全労連は、労働者の要求実現を目的として、1989年に結成された労働組合です。
残業代の不払い、パワハラ、解雇、配置転換など、あらゆる分野の労働問題を対象とする「労働相談ホットライン」を開設しています。
相談に費用はかかりません。
受付時間は、原則として平日9時~17時までです(地域で異なることがあります)。
メールで相談することもできます。
社会保険労務士
社会保険労務士は、労働や社会保険に関する法令の専門家です。
残業代の不払いを含む、さまざまな相談に対応しています。
社会保険労務士に相談する主なメリットは以下の通りです。
【メリット】
- 不払いになっている残業代を計算してくれる
- 労働基準監督署などへの相談に同席してくれることがある
- 「あっせん」の際に代理人になれる(特定社会保険労務士のみ)
全国社会保険労務士連合会は「あっせん」を次のように説明しています。
訴訟手続きによらないで、当事者双方の話し合い※に基づき、紛争(労働問題)の解決を図ろうとするものです。
職場トラブルの迅速な解決方法として「あっせん」が利用されています。
ただし、従業員側として対応している社会保険労務士は多くない傾向があります。
また、弁護士に比べると対応できる範囲も限られています。
残業代が出ないトラブルを弁護士に相談するメリット
残業代が出ない場合は、弁護士に相談すると問題を解決できる可能性があります。
弁護士に相談する主なメリットは次のとおりです。
残業代を計算してくれる
不払い残業代を請求するため、その金額を正確に算出しなければなりません。
計算には法的な知識と一定の証拠を要します。
弁護士は、専門的な知識を活用して依頼者に代わり不払いになっている残業代を算出してくれます。
算出の根拠となる計算書を作成してもらえる点も特徴といえます。
会社との交渉を進めやすくなります。
法的なアドバイスをしてもらえる
問題解決に向けたアドバイスを受けられる点も魅力です。
具体例として、実労働時間に関する証拠の集め方が挙げられます。
専門知識がないと、証拠を効率よく集められません。
何をどうやって集めればよいかわからないためです。
弁護士に相談すると、これらの問題を解消できます。
手続きや会社との交渉を代わりに行ってくれる
弁護士は、依頼者の代理人として行動できます。
会社との交渉や各種手続きを本人に代わって行えます。
この点は、他の相談先との大きな違いです。
弁護士が代理人になると、従業員の訴えを無視していた会社が態度を変えることもあります。
会社に一定の圧力を与えられる点も利点です。
精神的なストレスを軽減できる
不払い残業代の請求には、大きなストレスがかかります。
必要な証拠を集めたり、会社と交渉したりしなければならないためです。
弁護士に依頼すると、これらの取り組みを任せられます。
したがって、精神的なストレスも軽減できます。
労働審判や民事裁判にも対応してくれる
労働基準監督署などに相談しても、残業代に関する問題を解決できる保証はありません。
進展が見られない場合は、労働審判や民事裁判で解決を目指すことになります。
代理人として行動できる弁護士は、これらの手続きにも対応しています。
労働審判や民事裁判まで一貫して対応できる点も、弁護士に相談する利点といえます。
残業代請求権の時効に要注意
残業代を請求するときは、時効に注意が必要です。
労働基準法で次のように定められています。
この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。
ただし、現在は経過措置により5年ではなく3年となっています。
給料日の翌日から、3年以内に残業代を請求しなければなりません。
出典:(pdf)厚生労働省「事業主の皆さま、労働者の皆さま 未払賃金が請求できる期間などが延長されています」
時効を完了させないためにできること
いくつかの方法で、時効の完成を阻止できます。
具体的な方法は以下の通りです。
【方法】
- 内容証明郵便を送付して残業代の支払いを求める(6カ月間の猶予)
- 労働審判の申し立てまたは訴訟の提起(手続き終了まで時効の進行が停止)
催告による6カ月間の猶予は一度だけです。
この間に話し合いがまとまらない場合は労働審判へ進みます。
労働審判や判決が確定すると、時効が更新されるため経過した期間をリセットできます。
残業代が出ないときは弁護士に相談
本記事では、残業代が出ないときの相談先について解説しました。
主な相談先として、弁護士、労働基準監督署、労働組合が挙げられます。
会社との交渉が決裂して労働審判などへ進むと、原則として弁護士のサポートが必要です。
お困りの方は、東京の労働問題に強い弁護士なら青山東京法律事務所にご相談ください。
残業代の請求をはじめ、幅広い労働問題に対応しています。
初回面談は無料ですので、お気軽にご相談いただけます。
監修者
植田 統 弁護士(第一東京弁護士会)
東京大学法学部卒業、ダートマス大学MBA、成蹊大学法務博士
東京銀行(現三菱UFJ銀行)で融資業務を担当。米国の経営コンサルティング会社のブーズ・アレン・アンド・ハミルトンで経営戦略コンサルタント。
野村アセットマネジメントでは総合企画室にて、投資信託協会で専門委員会委員長を歴任。その後、レクシスネクシス・ジャパン株式会社の日本支社長。
米国の事業再生コンサルティング会社であるアリックスパートナーズでは、ライブドア、JAL等の再生案件を担当。
2010年弁護士登録。南青山M's法律会計事務所を経て、2014年に青山東京法律事務所を開設。2018年、税理士登録。
現在、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論の講義を行う他、Jトラスト株式会社(東証スタンダード市場)等数社の監査役も務める。



