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内容証明郵便とは|期待できる効力と記載事項・発送までの流れ

内容証明郵便は、差出人が作成した謄本をもとに、日本郵便が文書の存在や内容、差出日などを証明するサービスです。
主に、相手になんらかの請求をする場合に、将来争いになったときに、相手方へ通知したという証拠を残すために利用されます。
細かな書式ルールや手続きが定められているため、事前に仕組みを理解しておくことが重要です。
本記事では、内容証明郵便の概要や効力、記載事項、送り方、料金、注意点まで詳しく解説します。

内容証明郵便とは

内容証明郵便は、差出人が作成した謄本(内容文書の写し)を日本郵便が保管し、郵便物の内容・差出人・宛先・差出日を証明する制度です。
内容文書は受取人へ送付する文書、謄本はその写しで、差出人と郵便局が各1通ずつ保管します。
証明されるのは「文書の存在と内容」であり、内容の真実性まで証明するものではありません。

名称 概要
内容文書 受取人に送付する文書
謄本 原本の内容を全て書き写した文書

謄本は、差出郵便局と差出人が保管します。
この仕組みにより、内容文書の存在を証明するサービスといえます。
ただし、内容が真実であることを証明するわけではありません。
証明するのは内容文書の存在です。

内容証明郵便は、受取人に何らかの請求を行うとき、受取人に送付した証拠を残しておきたいときなどに利用されています。

e内容証明とは

今では、優銀局に書面を持っていって送るという手続は、弁護士事務所では利用されていません。

e内容証明(電子内容証明)を利用しています。これは、インターネット経由で内容証明郵便を差し出せる日本郵便のサービスです。
パソコンで作成した文書をアップロードし、窓口に行かずに手続きが完了します。
料金がやや安く、複数通の同時送付やセキュリティ面でもメリットがあります。

【サービス利用の流れ】

  1. 差出人が内容文書をWordファイルで作成する
  2. 郵便局の「Webゆうびん」へログインする
  3. 「Webゆうびん」からe内容証明を申込む
  4. インターネットを介して1の文書を送信する
  5. 郵便局が4の文書を受け付けて確認する
  6. 郵便局がイメージ変換、証明文・日付印挿入を行い、受領証を作成する
  7. 郵便局が印刷、照合、封入封かんの後、発送する
  8. 受取人に正本を配達する

弁護士事務所のパソコンで作成した内容文書を、郵便局の公式サイトへアップロードすれば、印刷などをして内容証明郵便として配達してくれます。
e内容証明の主なメリットは以下のとおりです。

【e内容証明のメリット】

  • 一定の条件を満たす場合、郵便窓口を利用するよりも料金が安い
  • 封筒、用紙などの文房具を用意する必要がない
  • 移動の手間や待ち時間がかからない
  • 内容(氏名・住所など)の異なる文書をまとめて送付できる
  • 内容文書を持ち運ばなくてよい(セキュリティが高い)

以下の差出方法を用意している点も魅力です。

差出方法 概要
かんたん差出し 1人の差出人が1人の受取人に1通のe内容証明を送付できる。初心者に適した差出方法
差出し 複数のe内容証明をまとめて差し出したり、同じ文書を複数の宛先へ送付したりできる。e内容証明を大量に差し出したいときに適した方法
差込差出し 最大100通のe内容証明を差し出せる。文書ファイルと差込データファイルの指定が必要。e内容証明を大量に差し出したいときに適した方法

e内容証明には、以下の作成規定などが設けられています。

項目 規定
文書作成ソフト Microsoft Word2016、2019、2021など
文書枚数 最大5枚
文字ポイントサイズ 10.5~145ポイント
文字の種類 JIS第1、2水準範囲の文字
図・表 使用不可

出典:郵便局「e内容証明(電子内容証明)

便利なサービスですが、事前にルールを確認してから利用する必要があります。

内容郵便とほかの郵便の違い

内容証明郵便は、一般書留と内容証明を組み合わせたサービスです。
通常の郵便や書留、特定記録では「内容」までは証明されませんが、
内容証明郵便は「文書の内容」自体を証明できる点が最大の特徴です。

また、書留と内容証明は、速達や配達時間帯指定などと同じく、郵便物に付加できるサービスです。
内容証明郵便と他の郵便には以下の違いなどがあります。

サービスの名称 主な違い
通常の郵便(定形郵便、定形外郵便など) 内容文書を証明できない。受取人に届いたことや届いた日時もわからない。一方で、利用料金は安価。内容文書の証明や受取の確認を必要としないときなどに適している。
一般書留 郵便物の引き受けから配達までを記録。郵便物が破損した場合や届かなかった場合に、損害要償額の範囲内で実損額を賠償する。内容証明郵便は、一般書留としなければならない
特定記録 郵便物などの引き受けを記録するサービス(差出人に受領証を発行)。オンラインで配達状況を確認できる。ただし、内容文書の証明はできない。また、受領の有無もわからない(配達状況の確認は可)。料金は、内容証明郵便より安価。
配達証明 一般書留として送付した郵便物を対象に、配達した事実を証明するサービス(受取人の証明は不可)。ただし、内容文書は証明できない。内容証明郵便は配達の証明をできないため、本サービスと組み合わせて利用することが多い。これにより、内容文書の証明、配達の証明ができる。

以上からわかるとおり、サービスにより特徴は異なります。
目的にあわせて使い分けることが大切です。

内容証明郵便の効力

内容証明郵便は、裁判や交渉の証拠として利用できるなど、法的な効力を持っています。
主な効力は以下の通りです。

【法的な効力】

• 送付した文書の内容・差出日・差出人・宛先を日本郵便が証明する
• 遅延損害金の請求や契約解除の催告、債権譲渡通知などの証拠となる
• 配達証明と組み合わせることで「到達日」も証明できる

各項目を詳しく解説いたします。

法的な証拠となる

内容証明郵便は、裁判や交渉の証拠になりえます。
日本郵便が差出人の謄本に基づいて、以下の内容を証明するからです。

【証明する内容】

  • いつ文書を差し出したか
  • 誰が誰に文書を差し出したか
  • どのような内容の文書を差し出したか

日本郵便が内容を証明するため、改ざんや捏造のリスクが低いと考えられます。
したがって、裁判や交渉の証拠として用いられる可能性があります。
併せて配達証明サービスを利用すれば、受取人が受け取った日も明らかになります。
通常の郵便(定形郵便、定形外郵便など)で、これらを証明することはできません。

内容証明郵便を活用すれば、差出人の意思を明確に伝え、受取人に心理的な圧力を与える効果が期待できます。
効果を理解して有効に活用したい郵便物の差出方法といえるでしょう。

遅延損害金を証明する証拠となる

配達証明付内容証明郵便は、到達日が記録に残りますので、遅延損害金の発生日を証明する証拠にもなりえます
遅延損害金とは、定められた期限までに債務が履行されなかったときに、履行の遅れで生じた損害を賠償する金銭です。
支払期限が定められていれば、その日を過ぎると自動的に遅延損害金が発生しますが、支払日が定められていない場合には、相手方に催告を行うことで、翌日から遅延損害金が発生するようになります。
その発生日を証明するのが、配達証明付内容証明郵便ということになります。

契約解除の通知・日時を証明できる

取引先などが債務を履行しない場合であっても、契約を解除する前に相当の期間を定めて履行を催告しなければなりません。
催告とは、債権者が債務者に債務の履行を求めることです。
具体的には、取引先に対して一定の期間内に商品代金の支払いを求める文書を送付するなどの行為のことですが、後に債務の履行がなされず、解除をすることになった場合、解除をする側は、催告をしたこと、それがいつ取引先に到達したかを証明できる状態にしておく必要があります。
そのために配達証明付内容証明郵便が用いられているのです。

債権の相殺

相殺とは、同種の債権を有する者同士が意思表示により債権を消滅させる手続きのことです。
たとえば、甲が乙に対して売買契約に基づく売掛債権50万円、乙が甲に対して売買契約に基づく売掛債権50万円をもっていたとします。
支払期日に乙が50万円を支払ってくれない場合で、それぞれの債務が弁済期にあれば、甲は債権を相殺できます。

相殺の意思表示は口頭でも行えますが、後のトラブルを防ぐため配達証明付内容証明郵便を用いることが一般的です。
配達証明付内容証明郵便を送付する場合は、債権の種類(自働債権、受働債権)、相殺の意思、相殺後の債権債務関係などを記載する必要があります。

債権譲渡の効力が発生する

内容証明郵便は、債権譲渡にも用いられています。

債権譲渡契約は、元の債権者と新しい債権者間で締結されますが、債務者にその事実は知らされません。
そこで、債務者から承諾を得る、あるいは旧債権者から債務者へ債権譲渡通知を送付することが要求されます。
その債権譲渡通知に配達証明付内容証明郵便が利用され、債務者へいつ到達したかが明らかになるようになっています

債権の時効期間を6か月延長できる

債権は、一定の期間が経過すると消滅する時効という規定があります。
民法の規定(民法166条)によれば、通常は10年で債権は時効消滅します。

第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

引用:e-GOV法令検索「民法(明治二十九年法律第八十九号)

この消滅時効の完成猶予をするために、催告という手続が取られますが、それが配達証明付内容証明郵便で行われています。

第百五十条 催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

引用:e-GOV法令検索「民法(明治二十九年法律第八十九号)

ただし、2回目以降の催告で、時効の完成を猶予することはできませんので、時効の完成が猶予されている期間中に、対策を講じることが重要です。

内容証明郵便を弁護士に依頼するメリット

弁護士に依頼する主なメリットとして以下の点があげられます。

法的に正しい内容で送付できる

法律に基づいて手続きを行った証拠を残すため、内容証明郵便を利用するケースが少なくありません。
具体的には、相手方との契約を解除するとき、未払い金を請求するとき、債権譲渡を通知するときなどが考えられます。
これらの手続きは、法律で定められた要件に従って正確に行われないと、後で効力が否定されてしまう可能性もありますので、弁護士に依頼した方が安心です。

相手方にプレッシャーを与えられる

内容証明郵便を送っても、相手方が取り合ってくれないことがあります。
対応しなくても法律問題にはならないだろうと考えられているからです。

その対策のひとつとして検討できるのが、弁護士の名義で内容証明郵便を送ることです。

「通知を無視すると法的措置をとられるかもしれない」などのプレッシャーをかけられるため、相手方の真剣に対応しようと考える契機になるからです。

相手方との交渉を任せることができる

内容証明郵便を送ってから、相手方との交渉になることがありますが、法律問題の交渉経験が乏しい自社では、対応が難しいというのが現実ではないでしょうか。

そこで、弁護士名義で送付することで、弁護士に対応を任せてしまうことが考えられます。
弁護士なら、日ごろからこうした交渉案件を多数扱っており、また、相手方に自社では言いにくいことも、代わりに言ってくれますので、交渉を有利に進められるというメリットがあります。

法的措置を見据えた内容証明郵便を作成できる

弁護士事務所なら、将来的な法的措置を想定した内容証明郵便を作成できます。
裁判などで活用できる証拠として作成してくれます。
裁判の経験のない自社では、なかなかこのような対応ができるものではありません。

弁護士に依頼する際の費用

弁護士に依頼すれば、法的に正確な内容で作成でき、相手方への心理的圧力や交渉、将来の訴訟も見据えた対応が可能です。

費用の目安は「自社名義の作成を弁護士にサポートしてもらうのなら5万円、弁護士名義で出してもらい、さらにその後の簡単な交渉も引き受けてもらうとすれば、10万円以上となってきます。

依頼内容 費用の目安
内容証明郵便(自社名義)の作成を依頼 5万円
内容証明郵便(弁護士名義)の作成と相手方との交渉を依頼 10万円~

本格的な交渉が必要だということになれば、請求金額をベースに示談事件としての着手金と報酬金がかかってくる場合もあります。

目的にあわせて内容証明郵便を活用しましょう

ここでは、内容証明郵便について解説しました。

自社で作成し、送付してもいいのですが、相手に対するインパクトという点では、迫力不足の面があり、無視されてしまうこともあります。
弁護士から送ってもらえば、相手方も申し出を無視していると、法的措置を講じてくるなと考え、真剣に対応してきます。

多額の金銭のかかった案件などの場合には、弁護士に依頼して、弁護士名での内容証明郵便を送ってもらいましょう。それでこそ、受け取った相手も真剣に対応し、和解に向けた交渉もスムーズに進みます。

青山東京法律事務所は、たくさんのお客様から依頼を受け、相手方に対して損害賠償の請求を行ったり、債務の履行を請求したり、債権譲渡通知を送ったりと、多くの内容証明郵便を活用した事件を担当しています。
こうした事件では、その後の相手方との交渉が重要ですので、解決に至るまでしっかりとサポートしています。
青山東京法律事務所では、経験豊富な弁護士が、効果的な内容証明郵便の文案を考え、迅速に送付し、フォローアップの交渉を粘り強く進めていきますので、相手方に対して債務の履行や損害賠償の請求を行いたいと考えている方は、是非お問い合わせください。

監修者

植田統

植田 統   弁護士(第一東京弁護士会)

東京大学法学部卒業、ダートマス大学MBA、成蹊大学法務博士

東京銀行(現三菱UFJ銀行)で融資業務を担当。米国の経営コンサルティング会社のブーズ・アレン・アンド・ハミルトンで経営戦略コンサルタント。 野村アセットマネジメントでは総合企画室にて、投資信託協会で専門委員会委員長を歴任。その後、レクシスネクシス・ジャパン株式会社の日本支社長。 米国の事業再生コンサルティング会社であるアリックスパートナーズでは、ライブドア、JAL等の再生案件を担当。

2010年弁護士登録。南青山M's法律会計事務所を経て、2014年に青山東京法律事務所を開設。2018年、税理士登録。

現在、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論の講義を行う他、Jトラスト株式会社(東証スタンダード市場)等数社の監査役も務める。

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