
公開日: 更新日:
顧問弁護士を雇うメリットと契約締結前に確認したい5つのポイント
顧問弁護士を雇うことで、法的リスクを低減し、安定した事業運営が可能になります。
日常的な法律相談がしやすくなり、自社の状況に即した具体的なアドバイスも得られるため、企業の成長を支える重要なパートナーといえるでしょう。
本記事では、顧問弁護士を雇う主なメリットや、契約前に確認すべきポイントについて詳しく解説します。
顧問弁護士の必要性を感じている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
顧問弁護士を雇う重要性
顧問弁護士とは、顧問契約を締結した企業に対して、継続的に法律相談やサポートを提供する弁護士です。
企業が安定して成長するためには、法的リスクの管理や迅速な対応が不可欠であり、顧問弁護士の存在は大きな役割を果たします。
主な理由は以下の通りです。
顧問弁護士が必要といえる理由 | 概要 |
法律に関連するトラブルを未然に防げる | 契約書の不備や労務問題など、法律知識があれば回避できるリスクを事前に防止できる |
法務部と同様の機能を確保できる | 法務部の設置が難しい場合でも、外部の専門家による法務サポートを受けられる |
訴訟や紛争に速やかに対処できる | 企業の内情、方針を理解しているため、訴訟や紛争にスムーズに対処できる |
些細と思える事柄でも相談できて、法律的な裏付けを得られるため、経営判断の質も高められます。
顧問弁護士は、企業の法的トラブルを未然に防ぎ、発生時には適切に対処する専門家です。
企業活動と法律は切り離せないため、顧問弁護士の存在は、企業運営に不可欠な要素といえます。
顧問弁護士を雇うメリット
顧問弁護士を雇うことで得られる主なメリットは、以下の通りです。
トラブル発生毎に弁護士を都度探す必要がなくなる
顧問弁護士がいれば、トラブル発生時に新たな弁護士を探す手間が省け、迅速な初動対応が可能です。
自社の状況を把握しているため、詳細な説明を省略でき、問題の拡大を防ぎやすくなります。
【発生する問題】
- トラブルの解決に適した弁護士を見つけられない
- 弁護士を見つける時間がかかり初動が遅れる
- 自社のビジネス、トラブルの背景について説明しなければならない
安心して依頼できる弁護士を探しているうちに、トラブルが深刻化してしまうことが少なくありません。
顧問弁護士を雇っていれば、トラブルが起きたときに相談できます。
自社のビジネスや内部事情を理解しているため、原則として詳細な説明を必要としない点もポイントです。
したがって、初動を迅速に行えるため、問題の拡大を抑える効果が見込めます。
初動が早いため、トラブルの拡大を抑えられる可能性があります。
法に関することを気軽に相談できる
顧問弁護士を雇うと、日常的な法律相談を気軽に行えるようになります。
顧問料の範囲内で、相談する時間や回数が事前に定められている場合がありますが、追加費用を気にせず、さまざまな事柄を相談できます。
日常的な法律相談がしやすくなり、継続的なコミュニケーションを通じて信頼関係が深まります。初対面では相談しにくい内容も、顧問弁護士には気軽に相談できるのもメリットの一つと言えるでしょう。
【顧問弁護士に相談できる主な内容】
- 契約関係:契約内容の確認、契約書の作成など
- 労務関係:残業代の支払い、労働災害、就業規則の変更、ハラスメントなど
- 消費者対応:クレーマーへの対応、個人情報保護法への対応など
- 債権回収:売掛金の回収など
法律相談を気軽に行うことで、事前に対応策を講じる機会が増え、リスク管理の精度が向上します。
迅速に対応してもらえる
トラブルを拡大させず解決するため初動をいかに迅速に行えるかが重要となります。
顧問弁護士は、企業のトラブルに迅速に対応してくれます。
原則として、顧問契約を締結している企業の弁護士業務を他の業務より優先するためです。
電話やメールなどの連絡手段がすでに確立されている点も見逃せません。
予約をする必要がないため、相談開始までの時間を短縮できます。
顧問弁護士が、ビジネス内容、経営方針、契約内容、これまでの経緯を把握している点もポイントです。
ケースによっては、詳細な説明を行わなくても、具体的なアドバイスを受けることが可能です。
顧問弁護士は、自社の情報を事前に把握し、緊急事態への備えとして常に対応可能な体制を整えています。
また、契約企業を優先して対応するため、緊急時にも迅速なサポートが期待できるでしょう。
トラブルを未然に防止できる可能性が高まる
顧問弁護士は、契約書のチェックや就業規則の整備などを通じて、法的リスクを事前に把握し、トラブルの予防策を講じてくれます。
想定される法的なリスクを把握して対策を講じてくれるためです。
企業が遭遇するトラブルの中には、法律の知識があれば回避できるものがあり、
代表例として以下のトラブルがあげられます。
【法律の知識があれば回避できるトラブル】
- 取引先との契約内容に関するトラブル
- 従業員との労働条件に関するトラブル
顧問弁護士に契約書の審査を依頼すると、自社にとって不利な条文を発見できる可能性があります。
あるいは、就業規則を整備することで、従業員とのトラブルを防げることもあるでしょう。
つまり、顧問弁護士を雇うと、トラブルを未然に防ぎやすくなり、企業が安定的に成長する環境を整えられます。
法律に関する新しい情報を随時得られる
顧問弁護士は、自社のビジネスに関連する法律の最新情報を提供してくれます。
自社だけで、毎年のように繰り返される法改正などに対応することは難しいためです。
企業が注目したい法律に関する近年の情報として以下のものがあげられます。
【企業が注目するべき法律の情報】
- 労働基準法施行規則等の改正(労働条件明示のルール改正)
- 不正競争防止法の改正(デジタル空間における模倣行為の防止など)
顧問弁護士は、法改正や業界動向など、必要な最新情報を選別して提供してくれます。
事業内容などを踏まえて、実務に活用できるようにアドバイスしてくれる点もポイントでしょう。
したがって、顧問弁護士を雇うと、法律に関する最新の情報に基づきビジネスを展開できるようになります。
法務部を設置するよりも費用がかからない
法律業務を担う社内の部署として法務部があげられます。
法務部と顧問弁護士の役割は異なりますが、重複する業務もあります。
法務部の基本的な業務は以下のとおりです。
【法務部の主な業務】
- 契約関係
- 労務関係
- 債権回収
- 訴訟・紛争対応
法務部の設置には、人件費など多額の費用がかかります。
必要性を認識していても、実際に設置できない企業は少なくありません。
法務部の設置に比べ、顧問弁護士の月額顧問料は費用を抑えやすく、コスト面でもメリットがあります。
顧問契約の月額顧問料は、5万円~10万円となっています。
具体的な金額は、事業規模、求められる専門性、サービスの内容、サービスの利用頻度などで異なりますが、法務部を設置するより安価に抑えられるケースが多いといえます。
顧問弁護士には、費用面の魅力もあります。
自社に即したアドバイスが受けられる
顧問弁護士は、自社にあわせた具体的なアドバイスを行ってくれます。
自社のビジネス、経営方針、組織体制、取引先との関係、過去のトラブルなどを把握しているためです。
実情を踏まえたアドバイスは、日々の業務に活かしやすいです。
たとえば、取引先の特徴を踏まえて、契約内容に関するアドバイスを行ってくれるなどが考えられるでしょう。
継続的な契約により、自社の状況や過去の経緯を把握した上で、実務に即したアドバイスが受けられます。
オーダーメイドのアドバイスを受けられる点も、顧問弁護士を雇うメリットと言えるでしょう。
顧問弁護士を雇う際の留意点
顧問弁護士を雇う場合は、以下の点に注意が必要です。
月額の顧問料が発生する
顧問弁護士を雇うと、毎月顧問料が発生することになります。
顧問料の目安は月額5万円~10万円です。
顧問料に含まれる業務の内容は、一般的に契約書のチェック、簡易な契約書の作成、その他法律相談です。
訴訟、紛争処理、売掛金回収などの業務は、追加で費用がかかります。
当然のことですが、顧問弁護士の経験とアドバイスの質により、料金も変わってきますので、質と料金のバランスを取って顧問弁護士を選ぶことが大切です。
利用頻度が少ないとメリットが享受できない
顧問弁護士の多くは、月額顧問料制を採用しています。
サービスを利用しても、サービスを利用しなくても、月額顧問料は変わりません。
したがって、利用頻度が少ないと、雇うメリットを実感しにくくなってしまいます。
このような事態を防ぐため、日頃から顧問弁護士に法律問題を相談するという習慣を作り、意思疎通を図っておくことが大切です。顧問弁護士と仲良くなっておくことで、気軽に相談できる環境を作り、また、自社の状況をよく理解しておいてもらうようにしましょう。
顧問弁護士を選ぶ際に確認すべきポイント
全ての企業にとってベストといえる顧問弁護士は存在しません。
自社との相性を確かめて、慎重に選ぶことが大切です。
ここでは、顧問弁護士を選ぶ際に確認したいポイントを紹介します。
実績
顧問弁護士を選択する前に、ビジネスに活かせる実績があるかどうかも確認しておきましょう。
実績を確かめることで、自社の要求に応えられるか評価できます。
実績が乏しい場合は、適切な対応を行えない恐れがあるため、注意が必要です。
実際の業務では、法律的な知識だけでなく、ビジネスに配慮した判断も求められます。
企業法務の経験が浅い弁護士、ビジネスに対する理解が乏しい弁護士は、一般的な対応しかできないことも考えられます。
反対に、自社と同規模、同業種の企業をサポートしている弁護士、自社と同じ課題を抱えている企業をサポートした経験がある弁護士は、柔軟な対応を行える可能性が高いといえるでしょう。
企業法務の経験がある弁護士を選ぶことが重要となります。
相談時の対応
相談時の対応も忘れずに確認しておく必要があります。
チェックを怠ると、返事が遅い、専門用語が多すぎるなど、イメージと異なることがあるためです。
具体的な対応は、契約前の法律相談で確認できます。
無料の法律相談を実施している場合は利用するとよいでしょう。
法律相談で確認したい主なポイントは以下のとおりです。
【確認したいポイント】
- 話しやすさ
- 説明のわかりやすさ
- レスポンス
- 事務所の雰囲気
- アクセス
いずれかの点に疑問を感じる場合は注意が必要です。
他の弁護士事務所でも法律相談を受け、対応を比較することが望ましいでしょう。
長期間のお付き合いになることが多いため、焦らずにじっくりと選ぶことが大切です。
専門分野のフィット
顧問弁護士の専門分野についても、事前に確認しておくことが重要です。
具体的な専門分野は人により異なります。
【専門分野の例】
- 企業法務
- 労働問題
- 不動産
- 債務整理
- 債権回収
- 英文契約
自社が必要としている分野と顧問弁護士の専門分野が異なれば、的確なアドバイスが受けられなくなります。
また、不得意分野を依頼すると、調査に時間がかかったり、表面的なアドバイスしか受けられなかったりする恐れがあります。
自社のニーズを明らかにし、顧問弁護士の得意分野とのフィットを確認しておくことが大切です。
弁護士事務所の顧客に対する姿勢
弁護士事務所の顧客に対する姿勢にも注意しておきましょう。
弁護士は、日中忙しい人が多く、電話をしても、なかなか捕まることがありません。
事務員がすぐに顧問弁護士に連絡し、コールバックをしてもらう、顧問弁護士から携帯電話番号を教えてもらい、いつでも連絡できるようにしておく等の対応を取ってもらえないと、せっかく顧問契約を交わしても、連絡がくるまで、イライラしながら待つということになります。
このようなトラブルを避けるため、顧問弁護士と弁護士事務所の顧客に対する姿勢を確認しておくことが必要です。
メリットを理解して顧問弁護士を活用
ここでは、顧問弁護士のメリットについて解説しました。
主なメリットとして、法律相談を気軽に行える、トラブルを未然に防げるなどがあげられます。
適切に活用すると、企業が安定して成長する環境を整えられます。
顧問弁護士を選ぶ際には、実績、対応力、専門分野のフィット、顧客への姿勢を事前に確認しておきましょう。
青山東京法律事務所は、顧問弁護士をサービスの中心に位置づけており、どんな時にも顧問先にベストなサービスを提供することを心がけておりますので、顧問弁護士をお探しの時は、声をお掛け下さい。
監修者

植田 統 弁護士(第一東京弁護士会)
東京大学法学部卒業、ダートマス大学MBA、成蹊大学法務博士
東京銀行(現三菱UFJ銀行)で融資業務を担当。米国の経営コンサルティング会社のブーズ・アレン・アンド・ハミルトンで経営戦略コンサルタント。
野村アセットマネジメントでは総合企画室にて、投資信託協会で専門委員会委員長を歴任。その後、レクシスネクシス・ジャパン株式会社の日本支社長。
米国の事業再生コンサルティング会社であるアリックスパートナーズでは、ライブドア、JAL等の再生案件を担当。
2010年弁護士登録。南青山M's法律会計事務所を経て、2014年に青山東京法律事務所を開設。2018年、税理士登録。
現在、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論の講義を行う他、Jトラスト株式会社(東証スタンダード市場)等数社の監査役も務める。