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監修者:植田 統 弁護士(第一東京弁護士会)
青山東京法律事務所 代表
東大法学部卒、ダートマス大学MBA。東京銀行、ブーズ・アレン、アリックスパートナーズ等で経営戦略や企業再生の要職を歴任。現在は青山東京法律事務所代表として、約40社の顧問弁護士を務める。豊富なビジネス経験を武器に、高度な企業法務や事業承継を完遂する実務派弁護士。

労働問題を弁護士に相談したいものの、費用がいくらかかるのかがわからず、不安に感じていませんか?

労働者が未払い残業代の請求や不当解雇など、自身が置かれているトラブルについて相談する場合と、企業が労務トラブルへの対応を依頼する場合では、弁護士費用の相場が異なります。

そこで本記事では、労働者・企業それぞれの弁護士費用の相場や内訳、費用を抑える方法を解説します。

労働問題を相談した場合の弁護士費用の内訳・相場

労働問題を弁護士に相談して解決をはかってもらう場合、労働者側・企業側にかかわらず以下の費用が発生します。

【弁護士費用の内訳】

  • 相談料
  • 着手金
  • 報酬金
  • 実費

ここでは、それぞれの概要と相場を解説します。

相談料

相談料は、弁護士に本格的な依頼を行う前に発生する費用です。労働者側であれば、企業との交渉や労働審判の申し立て、訴訟などを弁護士に相談する際に、企業側なら労働審判や訴訟への対応を弁護士に依頼する際にそれぞれ発生します。

近年は初回無料の弁護士事務所も増えていますが、企業法務を専門とする事務所であれば30分あたり5,000~1万円程度の相談料を設定しているケースが多くみられます。

なお、企業が自社と顧問契約を結んでいる法律事務所に相談する場合は、基本的に顧問契約の範囲で対応してもらえるため相談料はかかりません。

着手金

着手金は、弁護士へ正式に依頼する際に発生する費用です。

労働者側からの依頼であれば、10万~30万円程度が相場ですが、なかには無料で引き受けている弁護士事務所もあります。一方、企業側からの労働審判への対応の依頼であれば相場は30万~60万円程度です。

労働審判は基本的に短期で進められるものであり、弁護士側がほかの案件を止めてでも優先的に対応する必要があるため、比較的高額に設定されています。

なお、着手金はこのあと紹介する報酬金と異なり、結果に関わらず必ず発生し、返還されることはありません。

報酬金

報酬金は「成功報酬」ともよばれており、弁護士に相談した事案が解決した際に発生します。基本的には、相談者が獲得できた経済的利益に対する割合で報酬額が設定されています。

経済的利益とは、弁護士のサポートを受けた結果、相談者が得られた回収額のことです。

たとえば、労働者側からの残業代請求で得られた額や、企業側が労働者からの請求に対して排除できた額などを指します。

労働問題における報酬金の相場は、労働者側・企業側ともに経済的利益の10~15%程度です。

実費

弁護士による交渉だけでは労働問題が解決せず、労働審判や労働訴訟に発展する場合は、「実費」が別途で発生します。

具体的には、印紙代(申立手数料)や郵便切手代(予納郵券)のほか、弁護士が裁判所に出廷する際の交通費や、日当(1回あたり5万~10万円程度)などが実費に含まれます。

印紙代とは、裁判を起こすにあたって国に支払う費用のことです。

労働審判の場合は民事訴訟と比べて安く設定されており、相手方への請求額によって変動します。たとえば、500万円請求する場合は15,000円、1,000万円請求するのであれば25,000円です。

民事で労働訴訟を行う場合は計算がやや複雑かつ労働審判よりも高額となるため、詳しくは弁護士に確認しましょう。

なお、実費は依頼の時点で一定の金銭を弁護士事務所に預けたうえで、弁護士がそこから支払いに充てる方法と、一旦弁護士事務所が立て替えて、あとで依頼者がまとめて支払う方法があります。

具体的な金額や支払いの方法、請求のタイミングなどは、弁護士への依頼時に作成される「委任契約書」によって決められるため、よく確認しておきましょう。

労働トラブル別の着手金・報酬金の費用相場

先ほどは着手金・報酬金の大まかな相場をお伝えしましたが、実際の費用は弁護士に相談するトラブルの具体的な内容によっても異なります。以下では、一般的な労働トラブルの内容別に、労働者側が相談する場合における着手金・報酬金の相場を紹介します。

【労働トラブル別の費用相場】

  • 残業代請求
  • 不当解雇・退職勧奨
  • 労働災害
  • 労働審判
  • パワハラ・セクハラ
  • 労働訴訟

残業代請求

未払いの残業代を企業に請求したい場合、着手金を無料に設定している弁護士事務所も多くありますが、10万円程度かかる場合もあります。

報酬金の相場は、回収できた残業代の15~30%程度です。なお、弁護士事務所によっては「20万円+25%」といったように、定額とパーセンテージを組み合わせて設定しています。

不当解雇・退職勧奨

「自分の意思に反して、職場を辞めさせられた」「職場に居づらい状態で、退職合意書にサインさせられそうになっている」このような状況でお困りの場合は、不当解雇あるいは退職勧奨にあたる可能性があります。

なお、不当解雇は法律で厳しく制限されています。一方で退職勧奨自体は「退職してほしい」という企業からの意思の伝達にすぎず、法的拘束力はありません。しかし、過度な退職勧奨は不法行為として損害賠償の対象になる可能性があるため、不当解雇・退職勧奨いずれの場合も弁護士に相談することをおすすめします。

このような不当解雇や退職勧奨のトラブルに関しては、着手金は無料あるいは30万円程度かかる場合があります。

報酬金は、経済的利益の15~30%程度です。

不当解雇・退職勧奨における経済的利益には、企業から支払いを受けた解決金や未払い賃金、慰謝料などが該当します。

「仕事を辞めずに済んだ」といったように、金銭的な評価ができない部分については、別途「月給の3か月分」あるいは「30万円」といった費用が発生するケースもあります。また、なかには最低報酬金として20~30万円程度の費用を設定している弁護士事務所もあります。

労働災害

業務が原因の負傷や病気、死亡は「労働災害(労災)」に該当します。労災の場合は、企業に損害賠償請求する費用と、労災の申請費用が別で計算されるケースがあります。

企業に損害賠償請求する際の着手金の相場は、5万~30万円程度です。労災の申請も依頼すると、別途上乗せされるケースが一般的です。

企業から損害賠償金が支払われたら、その金額の15~30%を報酬金として弁護士事務所に支払います。さらに、労災の申請が認められた場合は、障害補償給付金の数%程度、あるいは50万円程度が上乗せされます。

パワハラ・セクハラ

パワハラやセクハラなど、職場で発生したハラスメントを弁護士に相談する場合、着手金の相場は10万~30万円程度です。

報酬金は、加害者あるいは企業から支払われた慰謝料・損害賠償金の15~30%程度が相場です。

手続き別に追加で発生する弁護士費用の相場

上記で紹介した労働問題のトラブルは、弁護士を挟んだ交渉で解決すればそれで終了となります。しかし、交渉で解決できなかった場合は労働審判や労働訴訟といった手続きに移行し、別途で着手金・報酬金が発生するほか、印紙代と郵便切手代などを含む実費も支払う必要があります。

なお、労働審判と労働訴訟の主な違いは以下をご覧ください。

【労働審判と労働訴訟の違い】

  労働審判  労働訴訟 
期日の回数  3回まで  無制限 
平均審理期間  80.6日  15.9か月 
事件の担当者  裁判官1人・労働審判員2人の計3人  基本的に裁判官1人のみ 
手数料  安価 

(民事訴訟の半額) 

高価 

(例:未払い残業代100万円を請求する場合は手数料1万円) 

証人尋問・本人尋問  事実上不可能  実施可能 
本人の出席  必要  弁護士が出席すれば不要 

労働審判は、迅速かつ安価に問題の解決を図れる点が最大の特徴です。しかし、短期間ゆえに証人尋問や本人尋問の実施が難しく、複雑な事件や争点が多数にのぼる事件などには向いていません。

弁護士に相談したうえで、ご自身が置かれているケースに適した解決方法を選びましょう。

それぞれの手続きで必要な着手金と報酬金の相場については、以下で解説します。

労働審判

労働審判を依頼する際の着手金の相場は30万円程度です。

報酬金の額は解決したいトラブルの内容によって異なります。たとえば、経済的利益があった場合はその15~20%程度が相場ですが、経済的利益以外の利益があった場合は、定額で金額が決められている、あるいは「給料○か月分」と設定されているケースもあります。

労働訴訟

労働訴訟の場合は、過去に日弁連が定めていた弁護士会の旧報酬基準に基づいて着手金や報酬金が決められるケースが一般的です。

厳密には、旧報酬基準はすでに撤廃されているため、各事務所が自由に報酬金の額を決められますが、現在でも旧報酬基準を用いている弁護士事務所が多くあります。

具体的な計算方法は以下をご覧ください。

着手金

着手金は、請求金額に応じて計算されます。

【旧報酬基準における着手金の計算方法】

請求金額  着手金の額 
300万円以下の場合  請求金額の8% 
300万円を超えて3,000万円以下の場合  請求金額の5%+9万円 
3,000万円を超えて3億円以下の場合  請求金額の3%+169万円 
3億円を超える場合  請求金額の2%+369万円 

なお、着手金の最低額は10万円です。

報酬金

報酬金は、依頼者が得た経済的利益を基準に計算されます。

【旧報酬基準における報酬金の計算方法】

経済的利益  着手金の額 
300万円以下の場合  経済的利益の16% 
300万円を超えて3,000万円以下の場合  経済的利益の10%+18万円 
3,000万円を超えて3億円以下の場合  経済的利益の6%+138万円 
3億円を超える場合  経済的利益の4%+738万円 

労働問題の解決に弁護士は絶対に必要?

労働者と企業、いずれの立場でも、労働問題を解決するために必ず弁護士に依頼しなければならないわけではありません。しかし、現実的には弁護士に依頼せず自力で対処することは難しいといえます。

まず労働者の立場では、法律を熟知したプロに手続きを代行してもらえる点が、弁護士に相談する大きなメリットとして挙げられます。

特に、職場と大きなトラブルに発展している場合や、ハラスメントがあった場合などは、職場と直接やりとりすることに大きなストレスを感じる可能性があるでしょう。そのような状況でも、弁護士に相談すれば依頼者に代わって相手と直接交渉してくれるため、精神的な負担を軽減できます。

さらに、労働審判を申し立てる場合は、限られた期日で説得力のある主張をできるよう、弁護士が情報を整理してくれます。労働審判では、初回期日で裁判官や労働審判員の心象が決まると言っても過言ではないため、そのための準備を労働者一人で対処するのは現実的とはいえません。

一方で企業の場合は、こちらもプロにやりとりを任せることで、法律に基づいた範囲で、適切な対応をとってもらえます。

特に労働審判においては、初回期日までに十分な内容の答弁書を作成し、その主張を根拠づける証拠を提出しなければなりません。主業務を行いながら労働審判の準備も進めるのは大きな負担となるため、弁護士に依頼することが得策でしょう。

労働問題の弁護士費用を抑えるためのポイント

労働問題を解決したいのであれば、弁護士への依頼は必須といえる一方で、決して安くはない費用がかかることがわかりました。ここでは、弁護士費用をできるだけ安く抑えるために知っておきたい4つのポイントを紹介します。

【労働問題の弁護士費用を抑えるためのポイント】

  • 初回相談料無料の弁護士事務所を選ぶ
  • 報酬金を比較する
  • 完全成功報酬の弁護士事務所を選ぶ
  • 法テラスを利用する

初回相談料無料の弁護士事務所を選ぶ

相談料は、弁護士事務所によって5,000~1万円程度かかる場合もあれば、完全無料の場合もあります。費用を節約したいのであれば、相談料が無料の弁護士事務所を選ぶとよいでしょう。

報酬金を比較する

次に着目すべきは、労働問題の弁護士費用でもっとも大きくなる報酬金です。複数の弁護士事務所の報酬金を比較し、安いところを選ぶことで費用を節約できます。

たとえば、報酬金が経済的利益の15%の弁護士事務所Aと30%の弁護士事務所Bそれぞれの場合で考えてみましょう。

実際に得られた経済的利益が100万円の場合、弁護士事務所Aでは15万円、弁護士事務所Bでは30万円の報酬金が発生します。このように実際の数字で計算してみると、弁護士事務所Aが圧倒的に費用を抑えられることがわかります。

完全成功報酬の弁護士事務所を選ぶ

問題が解決した場合にのみ報酬金が発生する、完全成功報酬の弁護士事務所もあります。このような弁護士事務所であれば、着手金が発生しないため、万が一問題が解決しなかった場合もコストを最小限に抑えられるでしょう。

ただし、完全成功報酬の弁護士事務所は、着手金がない分、報酬金が高めに設定されていることがよくあります。そのため、トータルコストを抑えられるかどうかは状況によります。

見積もりを出してもらったうえで、他社とも比較しつつ検討しましょう。

法テラスを利用する

法テラスは、国によって設立された、法的トラブルを解決するための総合案内所です。経済的にお困りの場合は、弁護士や司法書士との無料相談や、費用の立て替えなどのサポートを受けられます。

ただし、法テラスのサービスを利用するためには収入要件と資産の要件を満たす必要があります。要件に当てはまる方で、可能な限り費用を抑えて弁護士に労働問題の解決を依頼したい場合は、法テラスにまず相談してみるとよいでしょう。

労働問題の解決にかかる弁護士費用は、無料~60万円程度+報酬金・各実費

労働問題の解決をはかる場合、労働者・企業いずれの立場であっても、無料~60万円前後の相談料と着手金が発生します。

ほかにも、問題が解決した場合は経済的利益などに応じた報酬金が、労働審判や労働訴訟に発展した場合は各種実費を別途で支払うこととなるため、数十万~数百万円の出費となることもあるでしょう。

費用を抑えたい場合は、複数の弁護士事務所を比較したり、法テラスも視野に入れたりすることをおすすめします。

なお、「従業員に残業代を請求された」「労働審判を申し立てられた」など、労働問題への対処にお悩みの企業様は、青山東京法律事務所までご相談ください。業種を問わずさまざまな企業様のトラブルに対処してきた実績をもとに、貴社をサポートいたします。

監修者

植田統

植田 統   弁護士(第一東京弁護士会)

東京大学法学部卒業、ダートマス大学MBA、成蹊大学法務博士

東京銀行(現三菱UFJ銀行)で融資業務を担当。米国の経営コンサルティング会社のブーズ・アレン・アンド・ハミルトンで経営戦略コンサルタント。 野村アセットマネジメントでは総合企画室にて、投資信託協会で専門委員会委員長を歴任。その後、レクシスネクシス・ジャパン株式会社の日本支社長。 米国の事業再生コンサルティング会社であるアリックスパートナーズでは、ライブドア、JAL等の再生案件を担当。

2010年弁護士登録。南青山M's法律会計事務所を経て、2014年に青山東京法律事務所を開設。2018年、税理士登録。

現在、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論の講義を行う他、Jトラスト株式会社(東証スタンダード市場)等数社の監査役も務める。

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