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青山東京法律事務所 代表
犯罪収益移転防止法という法律に違反すると、口座が突然凍結されるおそれがあります。そうなれば、給与の受け取りや公共料金の引き落としが止まり、生活がままならなくなってしまうでしょう。では、一体どのような行為が犯罪収益移転防止法に違反することになるのでしょうか?
本記事では、犯罪収益移転防止法の概要や、同法への違反が疑われる行為、また口座凍結された場合の影響などを解説します。
目次
犯罪収益移転防止法に基づく口座凍結とは?
犯罪収益移転防止法(犯罪による収益の移転防止に関する法律)とは、マネーロンダリングやテロ資金供与などを防止するために、2007年に制定された法律です。違法な手段で得られた資金が犯罪行為・テロ行為に使われることを防ぎ、国民の安全な生活、そして健全な経済活動を実現することを目的としています。
同法は「特定事業者」とよばれる一部の事業者に対して、以下に挙げる業務を行うことを義務づけています。なお、特定事業者に含まれるのは、銀行・信用金庫などの金融機関やファイナンスリース事業者、クレジットカード事業者、宅地建物取引業者などです。
【特定事業者に義務づけられている業務】
- 取引時確認
- 確認記録の作成・保存
- 取引記録等の作成・保存
- 疑わしい取引の届出(※弁護士・司法書士を除く)
- コルレス契約等締結時の厳格な確認
- 外国為替取引ならびに電子決済手段および暗号資産の移転等にかかる通知
- 取引時確認等を的確に行うための措置
預貯金契約の締結や、200万円を超える大口現金取引などを実施する際、特定事業者は上記の業務を行わなくてはなりません。
対して、上記の特定事業者を利用する者については、以下に挙げる行為に及んだ場合に罰則を受けることが定められています。
【特定事業者の利用者が行ってはならない行為の一例】
- ご自身あるいは他人名義の通帳・キャッシュカードを譲渡する
- 他人名義の通帳・キャッシュカードを譲り受ける
- 他人になりすまして預貯金契約を締結する
これらに該当する行為に及んだ場合、利用者の口座が凍結されるおそれもあります。
参照元:e-Gov法令検索「犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成十九年法律第二十二号)」
JAFIC「犯罪収益移転防止法の概要」
金融機関が口座凍結を実行する法的プロセス
不正が疑われる取引、たとえば急に高額な入出金が行われた、といった事態を金融機関が確認した場合、まず警察へ情報が共有されます。そして調査が進められ、犯罪収益移転防止法あるいはその他の法律に違反する行為が認められた場合には、金融機関に対してその旨が通達されます。通達を受けた金融機関は口座凍結措置を行い、以降その口座では入出金に関する一切の取引が不可能となるのです。
また、警察からの情報はほかの金融機関にも共有される場合があるため、それらの口座も凍結されると考えられます。
口座凍結の主な原因|犯罪収益移転防止法違反が疑われるケース
犯罪収益移転防止法の疑いが持たれ、口座凍結されてしまう原因としては、主に以下の3つが挙げられます。
【犯罪収益移転防止法違反が疑われるケース】
- 口座の売買・譲渡
- 登録情報との相違
- 不正利用に伴う高額入出金や海外送金
口座の売買・譲渡
口座の売買・譲渡は犯罪収益移転防止法に違反する行為であり、有罪となった場合には1年以下の懲役か100万円以下の罰金、またはこれらの両方が科せられます。基本的にいかなる金融機関の規約でも禁止されており、発覚した場合には当該口座、そして同名義のほかの口座も凍結されます。
「口座の売買・譲渡」と聞くと、通帳やキャッシュカードを第三者に譲渡する、または譲り受ける行為を指すように思われるかもしれません。しかし実際には、口座番号やインターネットバンキングのID・パスワードを第三者に共有する、また一時的に貸すだけでも、口座の売買・譲渡と見なされます。
なお、口座の売買・譲渡は、状況次第では詐欺罪にも問われるおそれがあります。譲渡した口座は、マネーロンダリングや詐欺のために利用されることがあるためです。
登録情報との相違
他人名義で口座を開設していたり、登録されている連絡先と実際の住所が異なったりした場合にも、犯罪収益移転防止法に違反していると見なされる可能性があります。この場合も、警察をはじめとする行政庁に金融機関から共有がされ、不正行為があると認められた場合には、口座が凍結されます。
不正利用に伴う高額入出金や海外送金
不正利用に伴う高額な取引や、それまでに見られなかった海外への多額の送金なども、犯罪収益移転防止法違反となりえるケースです。疑わしい取引を確認した金融機関が警察に相談し、その後の捜査によって不正利用であると発覚した場合には、口座凍結措置が取られます。
ただし、高額な入出金や海外への多額の送金が確認されたからといって、必ず口座が凍結されるわけではありません。顧客に対する聞き取りの結果、取引が正当なものであると確認されれば、そのまま口座を使いつづけられます。
突然の口座凍結で生じる生活への影響
口座が突然凍結されてしまうと、日々の生活を過ごすことが非常に困難となってしまいます。具体的には、以下で説明する問題が発生します。
給与受け取りや公共料金引き落としが不可能となる
口座が凍結されると入出金に関する一切の取引が不可能となり、給与振込やクレジットカード料金の自動引き落としが停止します。また、口座からの引き落としで公共料金を支払うこともできないので、手元に現金がなければインフラの供給停止につながる可能性も考えられます。つまり、ほとんど生活できない状態に陥ってしまうわけです。
同一名義の他行口座も凍結される
犯罪に利用された疑いのある口座は、警視庁が作成する「凍結口座名義人リスト」に掲載されます。このリストはほかの金融機関にも共有されるため、結果として同一名義の口座が凍結されてしまう可能性があります。
また、同様の理由から、新しく口座を開設することも極めて困難となるでしょう。持っている口座がすべて凍結され、かつ新しい口座が開設できなければ、給与を受け取ることもままなりません。そのため、現職で働きつづけることも、転職先を探すことも難しくなると考えられます。
警察による捜査と逮捕リスク
犯罪収益移転防止法の疑いで口座が凍結された場合、その後警察の捜査を受けることになる可能性は高いでしょう。その際の対処方法や、実際に逮捕・起訴にまで至ると考えられるケースを紹介します。
警察から事情聴取の呼び出しがきた場合の対処
事情聴取は任意であり、拒否することは可能です。
しかし、断りつづけていると嫌疑が深まり、強制捜査に踏み切られてしまうおそれがあります。また、事情聴取を受けたくないからといって、警察からの連絡を無視してはなりません。勤務先や実家などに連絡が行く可能性があるほか、「逃亡や証拠隠滅のおそれあり」と判断され、逮捕されるかもしれないためです。
事情聴取を受けるだけなら、まだ逮捕が決まったわけではないので、特段の事情がない限りは応じるのがよいでしょう。
事情聴取では、故意に口座を売買していないか、またマネーロンダリングや詐欺などの不法な取引に関与していないか、などについて取り調べを受けることとなります。
身に覚えがないのであれば、その旨を正直に伝えることが大切です。記憶があいまいである、また冷静に対応する自信がない場合には、質問に対してその場で返答せず、必要に応じて弁護士へ相談しましょう。
逮捕される可能性が高いケース
逮捕状が発付されるのは「嫌疑の相当性(犯罪を犯したと十分に疑われる)」と「逮捕の必要性(逃亡あるいは証拠隠滅のおそれがある)」の両要件を満たした場合です。犯罪収益移転防止法では、以下に挙げるケースがこの要件に該当すると考えられます。
【逮捕される可能性が高いケース】
- 住所不定・無職・職業不詳で逃亡するおそれがある
- 前科・前歴がある
- 警察からの任意の出頭要請や事情聴取に応じない
- 第三者に対しても口座を売却するように勧誘していた
- 特殊詐欺をはじめとする組織的犯罪への関与が疑われる
- 口座の購入者と口裏を合わせている可能性が高い
- 当該口座が利用された特殊詐欺事件の被害額が高額
犯罪収益移転防止法に違反する行為、たとえば口座を有償で売却した事実があったとしても、上記のケースに該当しなければ逮捕される可能性は少ないでしょう。ただし、違法行為を行ったことに変わりはないため、捜査は継続されると考えられます。
ご自身の口座が悪用された場合の法的措置
犯罪収益移転防止法に違反する行為に心あたりがない場合は、キャッシュカードや免許証、また暗証番号などが流出し、口座が悪用されていると考えられます。その場合は、いつ・どこで流出した可能性があるのかを、警察や金融機関に説明する必要があります。SMSやメール、SNS上のメッセージなどをさかのぼり、怪しい誘いに応じたことがないかを確かめましょう。
なお事情聴取の際に、記憶があいまいなことや事実関係が確かではないことを、不用意に発言しないように注意してください。説明の仕方に問題があると誤解を招く可能性があり、状況を悪化させてしまうかもしれません。
ご自身だけでの対応に不安が残るなら、弁護士に相談するのが最適です。警察に対して適切に回答するためのアドバイスや、その後の刑事手続きを進める際のサポートを受けられます。
犯罪収益移転防止法で凍結された口座は再度使えるのか?
犯罪収益移転防止法に違反した疑いで凍結された口座を再度使うには、警察および金融機関からの疑いを晴らす必要があります。しかし、そのハードルは高く、すぐに使えるようになる可能性は非常に低いと言わざるを得ないでしょう。
とはいえ、何も行動を起こさなければ状況は変わりません。口座が凍結されていることに気がついたら、とにかくすぐに金融機関へ連絡し、凍結の理由と今後の対応を確認しましょう。
そのうえで、警察・金融機関に対する事情説明や交渉などは、弁護士に対応を依頼することをおすすめします。弁護士の助力があれば凍結を解除できる見込みがあるうえに、刑事事件化した場合に弁護してもらうことも可能です。
口座内の預金が消える可能性がある
凍結された口座が振り込め詐欺やヤミ金融などで悪用されていた場合、口座内の預金が消えてしまうおそれがあります。これは、「振り込め詐欺救済法」という法律によって、口座内の資金を犯罪被害者の補償に充てることが定められているためです。
ただし、預金は突然消えるわけではありません。
預金保険機構という組織のWebサイト上で、預金債権消滅手続きが開始されたことが一定期間公告されたのちに、犯罪被害者への分配が行われます。この公告期間中に、金融機関に対して「権利行使の届出」、つまり当該預金口座の債権についてご自身が正当な権利を持つことを主張すれば、預金の消滅を防ぐことが可能です。公告期間は最短で60日のため、そのあいだに必ず権利行使の届出を行いましょう。
参照元:e-Gov法令検索「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律(平成十九年法律第百三十三号)」
預金保険機構「振り込め詐欺救済法に基づく公告」
口座が凍結された際に弁護士に相談すべき理由
犯罪収益移転防止法で口座が凍結されてしまった際には、ご自身だけで対応するのではなく、弁護士に相談することをおすすめします。ここでは、弁護士に依頼する具体的なメリットを整理します。
【弁護士に相談すべき理由】
- 金融機関との交渉や凍結解除手続きを代行してもらえる
- 警察捜査への対応でもサポートしてもらえる
- 債権消滅手続きによる預金の消滅を回避できる
金融機関との交渉や凍結解除手続きを代行してもらえる
口座凍結を解除するにあたっては、法的な知識が必要になる場面が多く、ご自身だけでは金融機関との交渉が難航してしまうかもしれません。その点、法律の専門家である弁護士であれば、法的な根拠をもとに交渉を行ってくれるため、手続きをスムーズに進められる可能性があります。
また、凍結解除のためには、金融機関が求める確認事項を把握したうえで、報告書や意見書などを提出することが求められます。報告書や意見書は、ご自身の身の潔白を証明するうえで非常に重要な書類であるため、これも弁護士に作成を依頼するほうがよいでしょう。
警察捜査への対応でもサポートしてもらえる
初めて事情聴取を受ける場合、不安感や焦燥感からどのように対応してよいかわからず、事実をうまく伝えられない可能性があります。弁護士のアドバイスを受ければ、何をどこまで話すか、またどの資料を提出するかなどが明確になるため、そのような事態に陥ることも防げます。
ご自身が不利になってしまう可能性を少しでも減らすためにも、警察からの連絡がきたらすぐに弁護士に相談し、早めに対策を準備しておきたいところです。
債権消滅手続きによる預金の消滅を回避できる
振り込め詐欺救済法によって預金が消滅するのを防ぐうえでも、弁護士のサポートが効果的です。ご自身の口座に対する公告の有無や、提出が必要な書類の準備、権利行使の届出の内容整理などを依頼できます。
預金の消滅を防ぐには、公告期間が終わるまでに権利行使の届出を行わなくてはならないため、弁護士に相談したうえで迅速に対応することを心がけましょう。
口座が凍結されたらすぐに弁護士へ相談することが大切
口座の売買・譲渡、また不正利用に伴う高額な取引、海外への多額の送金などが、犯罪収益移転防止法違反となりえるケースです。これらの事案に関わっていると判断され、警察の捜査によって裏が取れた場合には、当該口座が凍結されるおそれがあります。
犯罪収益移転防止法に違反しないようにすることが何よりも重要ですが、口座の売買・譲渡が違法とは知らなかった、またキャッシュカードや個人情報の流出が原因で、気づかないうちに口座が不正利用されていた、といったケースもあるでしょう。いずれにせよ、口座が凍結されていることに気がついた時点ですぐに金融機関に連絡し、その後の対応を弁護士にも相談しましょう。
口座が突然凍結されてお困りの方は、すぐに青山東京法律事務所にご相談ください。
また「過去にキャッシュカードを他人に渡してしまった……」など、犯罪収益移転防止法に違反した心あたりがある方からのご相談も受け付けております。
監修者
植田 統 弁護士(第一東京弁護士会)
東京大学法学部卒業、ダートマス大学MBA、成蹊大学法務博士
東京銀行(現三菱UFJ銀行)で融資業務を担当。米国の経営コンサルティング会社のブーズ・アレン・アンド・ハミルトンで経営戦略コンサルタント。
野村アセットマネジメントでは総合企画室にて、投資信託協会で専門委員会委員長を歴任。その後、レクシスネクシス・ジャパン株式会社の日本支社長。
米国の事業再生コンサルティング会社であるアリックスパートナーズでは、ライブドア、JAL等の再生案件を担当。
2010年弁護士登録。南青山M's法律会計事務所を経て、2014年に青山東京法律事務所を開設。2018年、税理士登録。
現在、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論の講義を行う他、Jトラスト株式会社(東証スタンダード市場)等数社の監査役も務める。





