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顧問弁護士にかかる費用相場は?依頼する業務内容別にチェック

企業が法的トラブルを予防し、迅速に対応するためには、法律の専門家である弁護士の協力が欠かせません。
しかし、「顧問弁護士と契約した場合、どの程度の費用がかかるのか心配」という方も多いのではないでしょうか。

そこで、顧問弁護士の費用について気になっている方のため、依頼する業務内容別に相場を解説します。
この記事を読むことでどの程度の費用がかかるのか、どうすれば顧問料を抑えられるのかなどがわかるようになるので、ぜひ参考にしてください。

顧問弁護士の費用の相場

顧問弁護士の費用相場は、月額5~10万円程度が一般的です。
依頼する弁護士や対応内容、事務所によって金額は異なります。
費用は法律で定められているわけではなく、各法律事務所が独自に設定しています。

これよりも安いプランを用意している弁護士・法律事務所もありますが、
依頼可能な内容が限定的で、担当弁護士の経験値が低い場合があるので、よく確認しておきましょう。

顧問料内で任せられる業務範囲

顧問弁護士と契約する場合にかかる月額費用は5~10万円程度ではありますが、この範囲内ですべての相談・業務に対応しているわけではありません。
顧問料の範囲内で対応できる主な業務は、日常的な法律相談、契約書のチェック、簡易な契約書の作成などです。

業務上の法律相談

業務上の法律相談とは、日常的な業務の中で発生する法律関係の相談のことです。
例えば、コンプライアンスや労働問題、契約関連、知的財産に関することなどが挙げられます。
これらの問題には法律に則った形で適切に対応しなければならないため、法律の専門家である弁護士のサポートが欠かせません。

一般的には、電話やメールによる簡単な相談は顧問料の範囲内で対応可能です。
一方で、複雑な調査や文書作成、訴訟等の紛争事案対応等が必要な場合には、追加費用が発生します。
調査や文書作成等は、案件ごとに見積もりを出してもらうことになります。訴訟等の紛争事案への対応の場合には、着手金、成功報酬方式での対応が通常です。

顧問弁護士として契約する場合、定額の顧問料の範囲内で対応可能な時間の目安が定められています。

それを超過した分はタイムチャージ制として請求されることもありますが、多くの顧問弁護士は多少時間が超過しても、追加の費用を請求してこないようです。

契約書のチェック・内容証明郵便の作成

作成した契約書に法的な問題がないか確認してもらい、問題がある場合は修正の助言を受けられます。
契約内容が複雑であるために詳しい調査が必要な場合や、翻訳を含む英文の契約書のチェックなどについては、顧問弁護士が多くの時間を費やすることになりますので、別料金を請求される場合が多いようです。
顧問料内で任せられる業務量がどの程度の業務量が含まれるかを確認しておくことが望ましいです

また、内容証明郵便の作成も依頼できます。
内容証明郵便は、主に債権回収の際や、何かトラブルが発生した際に用いられる郵便です。
その郵便物の内容や発送日、相手が確実に受け取った日付などが郵便局によって証明されます。
このことから、手紙を送ったのに「届いていない」と言われてしまうようなトラブルを避けるためにも役立つものです。

ただし、弁護士名で内容証明郵便を発送してもらう時には、その後の交渉も顧問弁護士が行うことになりますので、別料金を請求されます。

顧問弁護士に顧問契約外の業務を委託した場合の費用の相場

顧問契約に含まれていない業務(例:労働問題、債権回収などの紛争・訴訟対応)を依頼する場合は、別途費用が発生します。
ここでは、顧問契約に含まれていない紛争・訴訟対応といった業務を依頼する際に押さえておきたいポイントと、費用の相場について解説します。

紛争・訴訟への対応

かつては、旧弁護士会報酬基準というものが定められていました。日本弁護士連合会及び各単位弁護士会は、平成16年4月1日にこの報酬規定を廃止しましたが、未だに多くの法律事務所がこの規定に準じた報酬規定を使用しています。

この報酬規定によれば、訴訟事件の着手金は、次のように定められています。

事件の経済的な利益の額が300万円以下の場合 経済的利益の8% (ただし、最低額は10万円)
300万円を超え3000万円以下の場合 5%+9万円
300万円を超え3000万円以下の場合 3%+69万円
3億円を超える場合 2%+369万円

また、事件が終了した時には、以下のような報酬金がかかります。

事件の経済的な利益の額が 300万円以下の場合 経済的利益の16%
300万円を超え3000万円以下の場合 10%+18万円
3000万円を超え3億円以下の場合 6%+138万円
3億円を超える場合 4%+738万円

以上は目安で、事案の複雑性等によって、弁護士と依頼者との間で合意した報酬料率で契約することが通常です。

顧問弁護士を利用するメリット

顧問弁護士を利用することにより、さまざまなメリットがあります。
ここでは、中でも大きなメリットについて4つ解説します。

法的トラブルの予防につながる

弁護士といえば、何か法的なトラブルが起こった際に問題を解決してくれる専門家としてのイメージが強い方もいるのではないでしょうか。
ですが、法的トラブルの内容によっては、発生しただけでも企業の信用を著しく落としてしまう恐れがありますので、法的トラブルが発生してからではなく、予防の段階から顧問弁護士の力を借りておくことが必要です。

顧問弁護士は単発でのスポット契約とは違い、企業と継続して付き合っていくことになりますから、その企業の日常の業務の流れ、人材の質、取引先との取引状況などについて、より正確、かつ、深い知識を得ることが可能になります。

こうした知識をもとに、顧問弁護士は、現在はまだ表面化していないリスクについても予測することができるようになり、企業の法的トラブルの予防が可能になっていきます。

有事には迅速に対応してもらえる

発生する法的トラブルの中には、スピード感をもって対応しなければならないものもあります。
顧問弁護士なら、現在会社が置かれている状況などについて十分に理解していますから、一から説明する必要がありません。
スポットで弁護士を雇うのと比べて、大幅に時間を短縮することができるため、迅速な対応が可能となります。
また、スポット契約の場合は、どうしてもその企業の業務についての理解が不足した中で、企業にアドバイスをしていくことになりますから、アドバイスの質も高いものは期待できません。
こうした点を考慮すれば、顧問弁護士を持っておくメリットは明らかです。

法務部門を設立するよりも費用が抑えられる

新規に企業内で法務部門を設立する場合、そこで働く人材を採用したり、他部署から異動させたりして調整しなければなりません。
人件費や教育費、採用コストといったものがかかることになります。
場合によっては、コストをかけて採用した人材が早期に辞めてしまい、コストがかさむ結果となることもあります。

また、法務部に企業内弁護士を採用したとしても、契約書の作成やチェックをメインの業務としてやっていますので、訴訟などの紛争処理は苦手である場合が多いようです。結局、紛争処理に当たっては、外部の弁護士に頼らざるを得なくなります。

顧問契約の料金は、月5万円から10万円程度ですから、コスト的にも外部の弁護士を使う方が安く、また、外部の弁護士であれば、紛争処理の経験も豊富で、なおかつ、他社の事例にも通暁していますので、受けることができるサービスの質の面でも、顧問弁護士の方が有利になります。

自社の状況に合わせたアドバイスがもらえる

スポット契約と比較した場合の顧問契約の大きなメリットは、自社の状況に合わせたアドバイスがもらえる点です。
会社の実情に通暁していない弁護士にはできない、迅速かつ質の高いサービスを受けることができます。
弁護士と日頃から継続的な顧問関係を築いておくことにより、自社に必要な予防策や対応の提案を受けることが可能です。

顧問弁護士を選ぶ際に費用以外に確認すべきポイント

顧問弁護士は対応力や専門性に差があるため、費用だけでなく、以下の点も確認しましょう。

【費用以外の確認ポイント】
• 顧問弁護士としての経験
• 自社の業種・業務への理解
• 企業法務の経験・知識
• レスポンスの速さ
• 相談のしやすさ

各項目について詳しく解説いたします。

顧問先を多数持っている弁護士に依頼する

顧問弁護士というのは、患者とかかりつけ医の関係に似ています。患者はどこかの具合が悪くなれば、かかりつけ医に診てもらい、その後の治療法について相談します。重篤な病気であれば、専門医を紹介してもらいます。

顧問弁護士もかかりつけ医と同じような存在で、どんな問題にでも対応できる人が望ましいのです。
顧問弁護士としての経験を積んでいる弁護士であれば、種々雑多な問題の処理に慣れていますので、企業としては、何でも安心して相談できるようになります。

自社の業種・業務への理解があるか

顧問弁護士としての経験だけではなく、自社の業種や業務に関して理解している弁護士を選ぶことができれば、なおさら安心です。
業種・業務への理解がある弁護士の方が、本当に役立つ実践的な助言をしてくれるためです。
過去にどのような会社、どのような業種の顧問弁護士を担当してきたのかなどを確認したうえで、自社の業種・業務への理解があるか見極めることが重要です。

企業法務に関する経験・知識があるか

企業法務の顧問弁護士に必要なのは、企業の状況はよく理解した上で、その法律的問題点を洗い出し、さらに問題点をどのように解決していく能力です。

そのためには、何よりも経験値の高さが重要ですので、これまでに企業法務に関する経験や知識を積んできた弁護士を選ぶことをおすすめします。

顧問弁護士は企業と近いところで継続的に関わることになるので、中長期的な視点でリスクマネジメントが可能な存在でなければなりません。
これまでの経験・知識を確認しておきましょう。

レスポンスが速いか

相談や業務を依頼した際のレスポンスが速いかも非常に重要です。
例えば、法的トラブルが発生した際、とにかくスピード感をもって対応しなければならないようなケースがあります。

レスポンスが遅い弁護士と顧問契約を結んでしまった場合、支援を必要とするときに適切な支援が受けられない可能性があります。
古き良き時代に弁護士になった人の中には、お高く留まっていて、迅速なレスポンスが難しい弁護士も少なくありません。

問い合わせをした際、どの程度で返信が来るかなどから見極めていきましょう。
簡単に返信可能な問い合わせ対応のメールの返信にも時間がかかるようであれば注意しなければなりません。

相談しやすいか

弁護士によって相談のしやすさには差があります。
例えば、話しにくいと感じる弁護士だと業務上の不安や疑問が発生した際に相談をためらうことになってしまいます。
結果的に確認や対応の遅れが重大な法的トラブルに発展する可能性もあります。

レスポンスが早く親身になって対応しているものの、説明がわかりにくい弁護士もいるので、実際に会って話を聞き、判断することが重要です。
専門用語ばかりで何を言っているのかわからない、話が長くて要点がつかめないといった弁護士だと、どうしても相談しにくく感じてしまいます。

話しやすさや質問したことへの回答、説明の明確さなどを基に、相談のしやすさを評価することが重要です。

顧問弁護士なら何かあった際に迅速に対応可能

顧問弁護士に依頼する場合はどの程度の費用がかかるのかについて解説しました。
依頼できる業務内容についてもご理解いただけたのではないでしょうか。
具体的な費用は弁護士・法律事務所によって異なるので、よく確認が必要です。

青山東京法律事務所には、様々なビジネス経験を積んだ弁護士が4名いますので、企業のニーズを正確に把握することが得意です。全員、企業勤めの経験がありますので、企業の皆様と同じ言葉で気軽に会話することができます。

また、現在、当事務所では40社を超える企業に対して顧問弁護士サービスを提供しており、企業で日常起こる多様な法律問題への経験値を積み上げています。

当事務所は、顧問弁護士サービスを業務の中心として事業展開しておりますので、経験のある顧問弁護士に依頼したい、ビジネスの言葉が分かる弁護士に依頼したいと考えている企業の方は、是非当事務所に声をお掛けください。

監修者

植田統

植田 統   弁護士(第一東京弁護士会)

東京大学法学部卒業、ダートマス大学MBA、成蹊大学法務博士

東京銀行(現三菱UFJ銀行)で融資業務を担当。米国の経営コンサルティング会社のブーズ・アレン・アンド・ハミルトンで経営戦略コンサルタント。 野村アセットマネジメントでは総合企画室にて、投資信託協会で専門委員会委員長を歴任。その後、レクシスネクシス・ジャパン株式会社の日本支社長。 米国の事業再生コンサルティング会社であるアリックスパートナーズでは、ライブドア、JAL等の再生案件を担当。

2010年弁護士登録。南青山M's法律会計事務所を経て、2014年に青山東京法律事務所を開設。2018年、税理士登録。

現在、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論の講義を行う他、Jトラスト株式会社(東証スタンダード市場)等数社の監査役も務める。

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